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ちょっとした短い小説の掃き溜め。 CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。 (※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず) コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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「織田、そろそろ俺達別れようぜ」


その日叶は突然言った。いつものように寮の織田の部屋で…叶はまるで自分の部屋のように寛いでいる最中だった。
それはとても淡々として、まるでその日の天気の話でもしているかのような口振りだった。
「何の冗談や、それ?全然笑えんのやけど…?」
今は10月。エープリルフールは随分遠い。

「冗談じゃねえよ。」
おやつのポッキーを小気味の良い音を立てながら食べる叶。その表情は飄々としていて読めない。

「もう3年の10月だぜ?恋愛ごっこもお互い良い加減飽きただろ。これからは受験で忙しくなるし、区切りをつけるには頃合じゃねーか。」
「ちょ…叶待てや…冗談キツいで…恋愛ごっこってなんや。叶はごっこ遊びのつもりやったんか?」
「はぁ?俺達一年の頃から付き合ってきたけど…はっきり言って互いの寂しさ埋め合わせてただけだろ?俺は三橋と別れたばっかで辛かったし、織田は上京したてで人恋しかったってだけで…お互いに都合良かっただけじゃねーか。俺は織田も同じだとばっか思ってた。まさかお前、本気だったなんてさぶいこと言わねーよな?」

菓子の箱に伸びる叶の腕を織田は掴んだ。

嘘やろ?叶…。悪い冗談やめてぇな。ホンマに冗談キツいで。

叶の冷めた視線を受けて織田は固まる。
違う。
これは冗談なんかじゃない。叶の表情を直視したまま織田は動けない。

叶は本気だ。

今までに見せたことのない壁を叶は織田に作っている。


「叶…俺はお前が…」

「三橋が転校しちまってどうなるかと思ったけど…3年間それなりに青春ごっこできて楽しかったよ。」

「叶!」

「離せよ」

手を振り払い叶は立ち上がる。
「もうここには来ないよ、織田。」

「叶!待てや!俺の話を…」
「うるっせーな。」

叶の低い声が部屋に響く。 イライラした時に彼が放つ声だった。

「もういらねーっつってんだよ!東京の大学に行けばいくらでも三橋に会えるんだ!ままごとは終りなんだよ!」

「…………」

なんやそれなんやそれなんやそれ…。
織田の頭の中が一気にぐちゃぐちゃになる。
叶が三橋に心底入れ込んでいることは初めから知っていた。
一年の頃の叶は捨てられた子猫のようで見ていられなかった。
それでも…。
それでも3年間一緒に過ごすうちに叶は変わったと思っていた。
自分を見てくれるようになった…と思っていた…
それなのに。

叶にとってそれはただの“ごっこ”に過ぎなかったというのか…。



「あ、そうだ」

部屋を出ていく寸前に思い出したかのように叶は一言付け加えた。

「俺達が別れたこと卒業するまでチームの奴等には言うなよ。余計な詮索とか気使われるのとかうざったいもんな。じゃあな。」


無情にもドアがしまる。


「なんや…それ…」



突然ふって沸いた己の不幸を理解できず織田はただただ呆然と叶が出て行ったばかりのドアを眺めていた。





嘘やろ?冗談やろ?

早くドア開いて戻ってきてや…。

冗談に決ってんだよバーカっていつものように蹴りいれんの?


俺…


お前に捨てられた…んか?


俺はお前に本気やった…


ごっこなんかやあらへん。
大真面目やった。



叶がはじめて俺の部屋に泊った日のこともはじめて叶を抱いた日のことも…一緒に行った野球部の遠征合宿も修学旅行も…夏休みに二人だけで行った秘密の小旅行も…


全部大事な大切な思い出としておぼえてる。青春ごっこしてたつもりなんて…一度もない。


叶も同じやって思っとった…。


叶は…違ったんか?


叶にとっては“ごっこ”やったんか?



その時机にのっていた冊子が視界に入った。

頭の中で点が線になる。

ああ…叶…。
俺わかってもうたわ…。
なんでお前がそんなこと言ったんか。
お前は本当に傷付きやすくて壊れやすくて脆いんやな…。上辺だけ取り繕って周りを威嚇して…影で泣いてばかりやないか。
まるで猫やな…ホンマに。
そして…俺はお前のそういうとこ…放っておけないんや。好きなんや。守ってあげたくなるんやな。支えてあげたくて仕方なくなる。重傷や。
叶…好きやで?





叶の嘘つき。







××××××
またもや三年で受験の話になってしまいました…(汗)
次回で簡潔します。多分

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その日、珍しく埼玉にも雪が積もった。
久しぶりに感じる雪の感触を踏みしめながら花井は一人校庭を歩く。

時が過ぎるのは早い。

卒業式も終わり、自分はもうこの学校の生徒ではなくなってしまった。

今日は大学受験の結果報告に花井はやってきたのだった。

(…受かったぞ)

自然と顔が緩む。受かった。俺は受かったのだ。
花井は合格通知書の入った鞄を強く抱き締める。あれから必死に寝る間を惜しんで勉強に励んだ。野球のできない日々はつらかったけれど、これから待ち受けている日々を思えば、そんなもの全く苦にならなかった。

(これからも…アイツと一緒にいられるんだな)

白い息が弾む。

とその時

「は~~~~~~~な~~~~~~~い~~~~~~~っ!!!!!」

懐かしい声が急接近する。

「うおわっ」

人のぬくもりと体温が背中に覆いかぶさった。田島が背中から抱きついてきたのだった。
会うのは卒業式以来の……愛しい人。

しかしなぜここに田島の姿があるのだろう?

花井は頬をほころばせつつ、疑問を感じた。今日は大学受験を受けたものだけが……その結果を学校に報告しに来る日、なのだった。

「田島、お前なんで今日学校に来てるの?」

お前は野球推薦じゃ…と言う前に花井の背中に顔を埋めていた田島が顔をあげる。

「俺、受かったんだぜ!!!!」

「は?!」

「花井の志望校ってB大だろ?!俺、受かったんだ!!!ゲンミツにっ!!」

「ちょ…!待て…待て待て待て待て。」

花井は田島に向き直る。両手で田島の肩をつかみ、まっすぐに見つめあった。
身長差はあの頃から変わらない。田島が伸びた分、花井もまた伸びた。

「落ち着け。」

自分に言い聞かせるように花井は言った。

田島はB大に受かったと言った。確かにB大は花井がA大に志望校を変える前の第一志望だった。

つまり…ええと…

「お前、A大の野球推薦の話は?」

「そんなんとっくの昔に断ったよ。俺、花井と一緒の学校が良かったんだもん。びっくりさせてやろうと思って、花井には内緒にしてたんだぜ!花井頭良いんだもん。俺勉強すんの超大変だった!!」

「……………。」

花井は頭を抱えてうずくまりたい衝動に駆られた。

ああ…なんということだ。嬉しい…田島の気持ちは実に嬉しい…嬉しいけど喜べない。

なぜなら。

「すまん…田島。実は俺……」
「花井、ひょっとしてB大落ちたのか?!」
田島が花井の顔を覗きこむ。

「いや…その俺も大学には受かった。受かったけど…あのな、俺…B大受けてないんだ。」

「へ?じゃ…どこ受けたんだよ?」

「A大。田島が…A大行くって噂で聞いて…俺…」

キョトンとした田島の顔。

やがてその意味を知った田島ははじけたように笑い出す。

そんな相手の様子を見ていたら花井もつられて、笑いがこみ上げてきた。

「くっ…ぷっ…あっははははははは!」
「ひゃはははははははは!」

花井は思う。

なんて間の抜けたことをしてしまったんだ、俺たちは。
お互いの気持ちが確かなものならば、伝えればよかったのだ。
一緒にいたいと。
同じ大学に行こうと思っていると一言伝え合えば、こんなことにはならなかった。

だけれど。

俺は田島を驚かせてやりたかった。

そしてまた田島も俺をビックリさせたかったのだろう。


気がつけば、二人で雪の絨毯の上に寝っ転がっていた。

空が青く、広かった。

そばにいる相手と手をつなぐ。

つないだ手は冬の冷気にあてられて冷たい。

冷たいけれど、暖かい手。

「離れ離れになっちまったな、結局。」
「そうだな。」

なんとなく…そんな気はしていた。
いつまでも一緒にはいられない。それはわかっていた。どこかできっと…壊れてしまうということを知っていた。それが早いか遅いか…それだけのことだった。

「でも離れ離れになっても俺、花井のこと好きだ。花井が行きたかった大学で俺野球をする。」
「俺も田島が行くはずだった…田島を認めてくれた…大学で…野球を続ける。」
「会いに行くよ。ゲンミツに、さ」
「ああ。」

むくっと田島が起き上がる。

一直線に真っ白な銀世界を駆け抜ける。

田島は全速力で小さく小さくなって行く。

花井は眺めていた。

小さくなっていく相手をずっとずっと…眺めていた。どんなに小さくなっても視線をそらすことなく眺めていた。

やがてピタリと田島が止まる。

ぐるんと振り返り大きく手を振る田島が見えた。





「花井ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」






馬鹿でかい田島の声が、青空に響き渡る。
田島は大きく息を吸い込んで、全世界に響き渡るような大声で叫んだのだった。





「Boys be ambitious!!!!!」

















××××××
田島様、お誕生日おめでとうでした。

それは高校三年の夏の終りのことだった。

「花井~!!」
田島が7組にやってくる。手には英語の教科書が握られていた。
「英語教えて!俺今日あたんだよね!」
「……またかよ」
最近田島は良くやってくる。やれこれを教えてあれをもっとわかりやすく説明して。
ほとんどが勉強のことだった。


「ここ。」
ホレホレと田島がシャープペンシルで1ヵ所を示す。
「Boys be ambitious.」
「花井って発音いいよな!で意味は?」

「…少年よ、大志を抱け。」
「ほ?」

田島は教科書に訳を書き込みながら首をひねった。

「大志って?」
「あ~…でっかい夢っつーか目標っつうの?」

「甲子園行こうぜっ!」

田島はバッティングの真似事を軽くしてみせる。田島の腕が虚空を切る。

「ってコトか?」
「あ~…そうそう。そうだよ。」

本当一年の頃からこいつは何も変わらねーなと思い花井は少し噴き出した。

「甲子園行こうぜ…と。」
「馬鹿。教科書に何書いてんだ、お前」
「ニシシ!」

軽く小突くと田島が笑う。花井は息を飲んだ。気がつけば田島の笑顔にのめり込んでしまう自分がいた。


「ありがと花井!じゃな!」
勢い良く田島がクラスを飛び出して行く。いつ見ても元気なやつだった。

「あれ…田島来てたんだ。」トイレにでも行っていたのか水谷がハンカチで手をふきながらやって来る。
「ああ。英語聞きに来た。」「最近よく来るよな、アイツ」
と阿部が言う。阿部は花井の後の席だった。

「やっぱりあの噂本当なのかなぁ」

と水谷が独り言のようにボソッと言った。

「は?噂?」

「あれ?花井知らねーの?」
「なにが?」

「田島がA大学の野球推薦貰ったって話」

「マジで?」
「本人に聞いたわけじゃないけど。もっぱらの噂だよ。」
なんとなくショックだった。いつまでも一緒にいられることなど有り得ない。それは分かり切ったことでそのタイムリミットは刻々と迫っていることも承知の上で。それでもいざそれぞれの進路話を聞くと淋しくて胸が締め付けられた。

「一般受験だったら絶対無理だよな。田島にA大って。」と阿部が言う。

確かに。花井の記憶するかぎりそれなりの偏差値が要求される大学だった…はず。

「入ってからちゃんと授業ついていけるように頑張って今から勉強してるんじゃないの?」
「あ~…それで。なるほど」水谷と阿部の会話を花井は上の空で聞いていた。


「田島が…A大…」


フラフラと席をたつ。教室の後のロッカーの上には様々な大学案内の資料が置いてあり自由に閲覧できるようになっていた。A大の資料を探し出す。

「偏差値高いな…」

花井の今の成績では少し届かない。野球部は強豪だ。けれど田島がこの大学に入学したら授業について行くのが大変だろうなと思う。田島の学力じゃ奇跡が起きない限り一般受験は厳しいだろう。だけど…

(…俺は…少し背伸びしたら…狙えるかも…)


まだ受験まで時間がある。今から頑張って勉強すれば不可能じゃない。


って…


(何っ…俺田島を追いかける…つもりして…)


一人恥かしくなり花井は赤面して頭を振った。

(正気に戻れ…正気に戻れ…)
志望大学を書いた進路希望書はこの間担任に提出したばかりだ。田島を追いかけて志望校を変えるなんて馬鹿げている。

そう馬鹿げたこと…だ…



花井の脳裏に田島の姿が蘇る。
バッターボックスにたった田島。
自然なフォーム。
何度も眺めてきた背中。
小さくて大きい背番号5。


田島と一緒に野球を続けることができたらどんなにいいだろう。


(……Boys be ambitiousか)

先ほどの田島の笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。


(大志…抱いてみっか!)


それは秘めた決意。
そして大いなる決断。


花井は呪文のように心の中で何度も何度もその言葉を唱えて胸に刻んだ。

Boys be ambitious!











××××××
遅れてしまいました…田島様お誕生日おめでとう小説です。しかも簡潔してないし…(恥)あ、明日には…!

三年生ですがクラス替えは一切なかった設定になっています。
毎晩のように夢を見る。

三橋が俺の上で喘ぎながら腰を振っている。
夢の中の三橋は、淫乱で激しい。
俺は何度も三橋の中に射精する。幾度となく三橋も達する。射精する度に三橋は喜んで俺にキスを落とす。俺は呼吸するのも忘れて舌を絡ませる。

二人の淫らな行為は終わらない。

「修ちゃあん…っ…気持ち良いよぉっ…あ…んっ…修ちゃん…」
三橋は白濁色の液を俺の腹上に降らせながら何度も何度も俺の名前を呼ぶ。俺も何度も三橋の名前を呼んで応える。
廉…愛してるよ。廉…好きだよ廉…廉…世界で一番愛してる…

夢の中の廉は嬉しそうに笑う。

修ちゃん…ずっとこうしていたいよ…俺…もっと…しよ?










「………………。」
けたましい目覚まし時計の音で目を覚ます。
気怠い体を持ち上げる。太股のあたりに感じる不快感。そっと布団をめくる。そして汚れた下着を目にする。こうしていつもと同じ朝が来たことを叶修吾は知る。今日もまたやってしまった…。夢の中で散々三橋と交りあう…夢精。
叶は額を押さえて虚ろに呟く。
「俺も…末期だな。」

下着を取り替えて、母親に見つからないように下着を風呂場で軽く洗い洗濯機に放り込む。制服に袖を通し朝飯を掻き込む。そろそろチャイムがなるはずだ。玄関からひょこっと三橋が顔を出し、修ちゃん早く早くと催促する。

がいつまでたっても三橋はこなかった。

「なんだよ三橋の奴。寝坊かよ。仕方ねぇ奴だな。」

遅刻ギリギリの時間まで粘るも三橋は現れない。しかたがない。軽く溜息をついて叶は一人登校する。


教室に入りクラスメイトと軽い挨拶を交わす。おはようおはようおはよう。この世に誕生してから果たして一体何万回唱えた言葉だろう。

自分の席につくと三橋の席を見る。
席に三橋の姿はない。

残念なようで少しホッとする。あんな夢を見たあとで、まともに三橋の顔が見れるか心配だ。
それにしても三橋はどこに行ったのだろう。野球部の朝練は今のところない。自主練でもしているのか。あるいは日直で職員室に行っているのかもしれない。

叶は頬杖をついて三橋が現われるのを待つ。そして朝のホームルームが過ぎ1限が過ぎ2限が過ぎあっという間に午前の授業が終わる。


三橋の席は未だに空席で、叶は少し心配になる。

(休みかよ…)


風邪でもひいたのか。それとも昨日誰かに嫌なことでもされて家で布団引っ被って泣いているかもしれない。
三橋が心配だ。

それにしても教師もクラスメイトも三橋が欠席だと言うのに誰も三橋の話題を口にしない。ヒドい連中ばかりだ。叶の中で苛々が募る。なぜ三橋ばかりがこうも不幸の中心でなければならないのか。あんなに努力家で実力のある男を誰も理解しようとしない。そればかりか排除しようとばかり考えている。ポキポキっと叶は無意識にシャープペンシルの芯を出しては折り出しては折りを繰り返した。
頭の中は昨夜の淫らな三橋を反芻してしまって黒板の文字は一切叶の頭の中に入ってこなかった。


その日一日の授業が終わる。部活が待っている。

ひょっとしたら三橋が練習にひょっこり現われるかもしれない。アイツは野球が…投げることが誰よりも大好きだから。掃除当番を適当に済ませ早足でグラウンドに向う。

グラウンドではすでに畠や宮川らが練習着に着替え終わって柔軟をしていた。その中に見知らぬでかい男はいたけれど…肝心の三橋の姿はない。

「叶!掃除当番の割りには早かったやん。」

見知らぬでかい男が親しげに話かけてくる。

(誰だよ。お前は。なんで俺が今週掃除当番だったこと知ってんだよ)

薄気味悪く感じる。そいつはとりあえず無視し畠や宮川らと軽い雑談を交わした後叶は言おう言おうと思っていた本題を告げる。


「な、お前ら昨日三橋に何もしてねぇだろうな?今日あいつ欠席だってのによ、クラスの奴等も担任も何にも言わないんだぜ?どうかしてるぜ。」

畠と宮川は途端に神妙な顔つきになる。顔を見合わせて、困ったような顔をする。

さてはこいつら…。

「おい!やっぱりお前ら昨日三橋になんかしたんだな?」

「叶」

悲しそうな顔をして畠は俺の肩を掴んで言った。


「三橋は外部受験で西浦に行ったんだ。もう三星にはいないんだ。」

「三星にいない…?嘘だろ…」

「しっかりしろよ叶ぅ…。昨日もそう言っただろ?」
宮川が泣きそうな顔で叶の腕を掴む。


(三橋が…?いない…?)


「叶」


でかいもみあげの男が心配そうに叶を見下ろす。

「さすがにもう初めましては飽きたで。いい加減目覚ましてくれや。毎日毎日同じことの繰り越しやんか…。」



(三橋…)



そうだ。
三橋は三星を出て行ったんだ…。俺を置いて…。俺を残して…。三橋は俺より野球を選んだ…。


三橋…。



叶の中に三橋と最後の別れを交わした雪の降る卒業式の記憶が鮮やかに蘇る。





廉…。
俺の心は中学の時間軸から抜け出せないみたいだ。
俺の心はきっと…お前を失ったあの日に死んじまった。
今の俺は心を失った…ただの容器に過ぎないんだ。大事な大事な中身を無くしちまった空の器に過ぎないんだ。


俺は今夜もきっとあの日々に帰るよ。きっと今夜もお前を狂うほど抱いて、現在や未来のことは全て忘れる。お前とのセックスで不毛な記憶は全て溶けて無くなるんだ。
なぁ三橋…そうしないと俺は生きて行けないんだよ。


お前のいない世界なんて…

俺には耐えられなかった。


壊れちまったみたいなんだ。


廉…愛しているよ…廉…。



どんなに俺が狂ってしまったとしてもこれだけは変わらない。絶対に。


叶修吾は三橋廉を愛している。


それだけが唯一の世界の真理だった。




目を覚ますと俺は裸のままベッドで寝ていて、阿部君もまた裸体のまま俺の横で本を読んでいた。


「……起きた?」

ほのぐらい明かりの中阿部君が言った。

阿部君の微笑を見て、俺は少し頬を染める。


意識が途切れるまで阿部君としていた行為を思い出した。二人でこれでもかと交りあった。精液の匂いがまだ部屋中に残っていて鼻につく。


「なっ…何読んでるっ…の?」

枕に顔を埋めて言った。恥かしくて阿部君の顔を見れない。こんなふうにエッチをしたことははじめてじゃないけれど、とてもそれは慣れるものでは無かった。


「…三橋に言ってもわかんないと思うけど」

「そっ…そう…だよね…ごめんなっさい…」

声は徐々に小さくなる。聞かなければ良かった。
本なんて学校の教科書ぐらいしかまともに見たことがないのに。聞いたってわからないくせに。余計な事を聞いて阿部君を…煩わせた…。

「おいっ!何も泣くことないだろ…」

阿部君に腕を掴まれてはじめて気がついた。
俺は泣いていたんだ。腕で涙を隠して…メソメソと。

情けなくて余計に涙が出た。
「ごっごめん…なさい…俺が…本なんか…読まない…くせに余計なこと…」

「馬鹿。そういう意味じゃね~って。お前未だにそういうこと考えんのな」

阿部君は俺を抱き寄せて優しく背中を擦った。


「おっ…俺が同じ本…とか読んだら…もっといっぱい…話せること…増えるかなって…思った…んだ。」


俺達の繋りは余りに一つに集約されていたから。

野球がなければ俺は阿部君と出会うこともこうして二人で抱き合うことも無かったんだ。だから話す話題といえばいつも野球のことばかりだった。

それは太い1本の糸に違いないけれど、絶対に切れない確証は何処にも無かった。
どんなに細くてもいい。無数の糸で阿部君と繋りたかった。もう阿部君と離れ離れになることはないんだって思えるぐらいがんじがらめに繋って安心したかった。


「バカ。無理して合わせる必要なんてねーよ。お前1チーム作ったとして、全員ピッチャーやりてぇっつったら困るだろ?それと一緒。」

「う…うぇ?」

「だから俺が本読んでたとして、お前が俺と同じ本読もうとする必要はないってこと。俺は読みたいから読んでるだけだし、もし読んでて面白えと思うことがあったらお前に教えてやるし。お前は自分のしたいと思うことをすれば良いんだ。」

「う…うん…」

「それに…」


阿部君は本を閉じるとジッと俺を見据えて言った。

「お前と俺、野球以外にも共通点あるよ。たくさん。教えてやろうか?」

「う…えっ?ほっ本当?…ひっ」


阿部君は手を伸ばして、俺の硬くなっている部分に触れた。阿部君はイヤラシイ手つきで撫でまわす。

「あっ…やっやだ…んっやめっ…」

「あんなにしたのにな。三橋って淫乱だよな。」


阿部君は俺の手を誘導して、阿部君のそれに触れさせた。
阿部君のここも俺と同じ。

「あっ…阿部君…」

「俺と一緒な。共通点あったろ?」

阿部君はそう言って俺に意識が薄まるような深い深いキスをした。



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