ちょっとした短い小説の掃き溜め。
CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。
(※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず)
コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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注意:死ネタです。
原作が捻じ曲がっています。
それでも宜しければどうぞ。
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ラストです。
昔からヤンデレ萌えだったようです;;
昔(1、2年前)くらいに書いた塚不を発掘したので載せます。
私達はとてもとても長い魔法にかかっていました。
自分達が魔法にかかっていることなど、そもそも忘れ去ってしまうほど完璧に、
私達はその魔法に魅せられていたのでした。
魔法を解く言葉は、とても単純明解な一言でした。
ある晴れた日の朝、突然彼が我々の魔法を解き破った。それはそれは晴天の霹靂
で。我々はとても動揺したのでした。
「ねぇ君達は、一体いつまで入れ替わっているつもりなの?」
『私はあなたで、あなたは私。』
仁王君とはじめて入れ替わったのは、一年の終りの頃でした。立海は全国制覇を
果たし、2連破へ向けて部内の士気もとても高ぶっていました。仁王君とは、クラ
スも違いますし、あまり話したことがなかったのですが(私と仁王君は全てが正反
対で、部内でも仲の良い友達が全く違ったからです)、この頃から私と仁王君は自
然と互いに良く話すようになっていました。
どちらが一方的に…ではありませんでした。我々は互いが一本の糸で繋がってい
るかのようにお互いに、意識し合って話し掛けていました。
我々は気がついたのです。
己の力の限界と、己の未来の可能性に。
当時から我々の学年には、真田君、柳君、幸村君の三人の化け物が君臨していま
した。彼等がいる限り、我々にシングルでの未来はありません。
仁王君もそして私も、この三人がいる限り、我々がシングルスプレイヤーとして
正レギュラーの座を手に入れることは、不可能だということに気が付きはじめて
いました。
そして我々の生きる道が、ダブルスにあるのではないか、ということも。
ダブルスは一人では、出来ません。掛け替えのないパートナーが必要不可欠なの
です。
そしてダブルスペアという未知なる相手を頭に思い描いた時、漠然と、私には仁
王君しかいないのではないか、と考えるようになりました。それは仁王君も同じ
でした。
なぜならば、仁王君と私は、常軌を逸っするほど顔が似ていたのです。
そしてそのことに、周囲はまったく気がついていませんでした。
知っていたのは、私と仁王君だけ。
私は眼鏡をかけていましたし、仁王君の派手な頭髪のおかげで、誰も我々の顔が、双子のように瓜二つなことなど、気がつきもしなかったのです。
私と仁王君の顔が瓜二つだということに気がついた時、私は彼が赤の他人だとはとても思えなくなりました。ひょっとしたら本当に双子の兄、もしくは弟。もしくは遠縁の親戚なのではないかと。
私は両親に、親戚関係について事細かく尋ねたり、こっそりと戸籍謄本を調べたりしました。(後で聞いた話ですが、仁王君も同時期に同じことをしていたそうです。)
しかし、我々の血がどこかでつながっているという決定的証拠は、何一つ出てくることは、ありませんでした。
仁王君と私は、赤の他人なのです。
なのにどうして顔がこんなにも同じなのか。
そのことに思い悩んだ時期もありました。
しかし、いずれにせよ、偶然にしろ必然にしろ、この事実をテニスに活かさない手はありません。
そして、まず作戦の第一段階として、私と仁王君は一度入れ替わってみることにしたのです。
私は仁王君の格好をして、仁王雅治として一日を過ごし、同様に仁王君もまた私として、つまり柳生比呂士として一日を過ごしました。
そして我々が入れ替わったことに気がついた人間は誰一人いませんでした。
クラスメイトも友人も先生も、そして両親までもが、我々がいれかわったことに気がつかなかったのです。
私は、仁王雅治という人間を演じているうちに、私の内なるものが次第に、ジワジワと変貌を遂げているという事実に直面しました。
それまでの私という人間は、皆の基本であり、絵に描いたような優等生でありました。その生活はとても縛りの多いものです。誰に対しても親切に接しなければならない、勉学は出来て当たり前…そんないつのまにか出来上がっていた自分自身が、己の望む姿ではなかったのだということに私は気がついてしまったのです。
仁王君はまるで猫のような人でした。誰にも心を開かず、何を考えているかわからない。飄々として、つかめない。誰も彼に親切にしてもらおうだなんて、望まない。風のように自由気ままに授業をサボる。もちろん勉強だって、気まぐれで、試験の時は得意科目と苦手科目の間には80点の差が生じることもある。
そんな仁王君の姿を演じるのは、私にとっての快感でした。
仁王君は、自分自身では知らなかった私が「ああなりたい」と願った人間像そのものだったのです。
そして仁王君もまた心の奥底で抱いていた人間像が、「柳生比呂士」そのものであったことを、入れ替わって柳生比呂士を演じているうちに気がついいたのでした。
そして我々はやがて、「では、元に戻ろうか」という魔法を解く呪文を口にしなくなったのです。
私は仁王雅治になり、彼は柳生比呂士になった。
そして二人の人間が入れ替わったことなど、世界はまったく気がつかずに時は過ぎていったのです
。
そうしてニ年の月日が流れていきました。
私はその長い月日の中で、自分が柳生比呂士であったことを忘れ、仁王君は自分自身が仁王雅治という人間であったことを忘れました。
我々はこのまま何食わぬ顔で、永遠に友を騙し、親を欺き、生きていくつもりでした。
しかし我々にとってまったくの誤算だったのは…彼、つまり幸村君の存在でした。
彼は世界で唯一、私と仁王君が試しに一度、入れ替わってから元に戻っていないことを見抜いていたただ一人の人間だったのです!!
なんということでしょうか!
彼は私と仁王君が、入れ替わってニ年もの間ずっと、気がついていながら見て見ぬふりをしていたのです!
そして幸村君がテニス部の部長に就任した日、残酷にも我々にこう言い放った。今まで散々遊び倒してきたお気に入りのおもちゃに、とうとう愛想をつかした子供のように。
「ねぇ、君たちはいつまで入れ替わっているつもりなの?」
我々の魔法は解けたのです。
しかし少しばかり魔法を解くのが遅かった。
私は私自身が何者なのかすっかりわからなくなってしまった。
(そして彼もまた自分自身が何者なのかわからなくなってしまった。)
私は柳生比呂士である。
(いいや、俺は仁王雅治じゃ。)
俺は仁王雅治じゃ。
(いいえ、私は柳生比呂士です)
朝、起きるとまず真っ先に鏡を見るんじゃ。そうして自分の容姿を確かめるナリ。
その日の私の器は何なのか。
今日の俺は仁王雅治。
じゃがのう…中身は?中身はどうなんじゃ?
私の心はどちらなのでしょう?
今こうして話している俺の自我は、仁王雅治という個人なんじゃろうか?それとも柳生比呂士という個人なんじゃろうか?
俺は誰じゃ?
(私は誰なのでしょう?)
私はあなたです。
そして
俺はお前じゃ。
自分達が魔法にかかっていることなど、そもそも忘れ去ってしまうほど完璧に、
私達はその魔法に魅せられていたのでした。
魔法を解く言葉は、とても単純明解な一言でした。
ある晴れた日の朝、突然彼が我々の魔法を解き破った。それはそれは晴天の霹靂
で。我々はとても動揺したのでした。
「ねぇ君達は、一体いつまで入れ替わっているつもりなの?」
『私はあなたで、あなたは私。』
仁王君とはじめて入れ替わったのは、一年の終りの頃でした。立海は全国制覇を
果たし、2連破へ向けて部内の士気もとても高ぶっていました。仁王君とは、クラ
スも違いますし、あまり話したことがなかったのですが(私と仁王君は全てが正反
対で、部内でも仲の良い友達が全く違ったからです)、この頃から私と仁王君は自
然と互いに良く話すようになっていました。
どちらが一方的に…ではありませんでした。我々は互いが一本の糸で繋がってい
るかのようにお互いに、意識し合って話し掛けていました。
我々は気がついたのです。
己の力の限界と、己の未来の可能性に。
当時から我々の学年には、真田君、柳君、幸村君の三人の化け物が君臨していま
した。彼等がいる限り、我々にシングルでの未来はありません。
仁王君もそして私も、この三人がいる限り、我々がシングルスプレイヤーとして
正レギュラーの座を手に入れることは、不可能だということに気が付きはじめて
いました。
そして我々の生きる道が、ダブルスにあるのではないか、ということも。
ダブルスは一人では、出来ません。掛け替えのないパートナーが必要不可欠なの
です。
そしてダブルスペアという未知なる相手を頭に思い描いた時、漠然と、私には仁
王君しかいないのではないか、と考えるようになりました。それは仁王君も同じ
でした。
なぜならば、仁王君と私は、常軌を逸っするほど顔が似ていたのです。
そしてそのことに、周囲はまったく気がついていませんでした。
知っていたのは、私と仁王君だけ。
私は眼鏡をかけていましたし、仁王君の派手な頭髪のおかげで、誰も我々の顔が、双子のように瓜二つなことなど、気がつきもしなかったのです。
私と仁王君の顔が瓜二つだということに気がついた時、私は彼が赤の他人だとはとても思えなくなりました。ひょっとしたら本当に双子の兄、もしくは弟。もしくは遠縁の親戚なのではないかと。
私は両親に、親戚関係について事細かく尋ねたり、こっそりと戸籍謄本を調べたりしました。(後で聞いた話ですが、仁王君も同時期に同じことをしていたそうです。)
しかし、我々の血がどこかでつながっているという決定的証拠は、何一つ出てくることは、ありませんでした。
仁王君と私は、赤の他人なのです。
なのにどうして顔がこんなにも同じなのか。
そのことに思い悩んだ時期もありました。
しかし、いずれにせよ、偶然にしろ必然にしろ、この事実をテニスに活かさない手はありません。
そして、まず作戦の第一段階として、私と仁王君は一度入れ替わってみることにしたのです。
私は仁王君の格好をして、仁王雅治として一日を過ごし、同様に仁王君もまた私として、つまり柳生比呂士として一日を過ごしました。
そして我々が入れ替わったことに気がついた人間は誰一人いませんでした。
クラスメイトも友人も先生も、そして両親までもが、我々がいれかわったことに気がつかなかったのです。
私は、仁王雅治という人間を演じているうちに、私の内なるものが次第に、ジワジワと変貌を遂げているという事実に直面しました。
それまでの私という人間は、皆の基本であり、絵に描いたような優等生でありました。その生活はとても縛りの多いものです。誰に対しても親切に接しなければならない、勉学は出来て当たり前…そんないつのまにか出来上がっていた自分自身が、己の望む姿ではなかったのだということに私は気がついてしまったのです。
仁王君はまるで猫のような人でした。誰にも心を開かず、何を考えているかわからない。飄々として、つかめない。誰も彼に親切にしてもらおうだなんて、望まない。風のように自由気ままに授業をサボる。もちろん勉強だって、気まぐれで、試験の時は得意科目と苦手科目の間には80点の差が生じることもある。
そんな仁王君の姿を演じるのは、私にとっての快感でした。
仁王君は、自分自身では知らなかった私が「ああなりたい」と願った人間像そのものだったのです。
そして仁王君もまた心の奥底で抱いていた人間像が、「柳生比呂士」そのものであったことを、入れ替わって柳生比呂士を演じているうちに気がついいたのでした。
そして我々はやがて、「では、元に戻ろうか」という魔法を解く呪文を口にしなくなったのです。
私は仁王雅治になり、彼は柳生比呂士になった。
そして二人の人間が入れ替わったことなど、世界はまったく気がつかずに時は過ぎていったのです
。
そうしてニ年の月日が流れていきました。
私はその長い月日の中で、自分が柳生比呂士であったことを忘れ、仁王君は自分自身が仁王雅治という人間であったことを忘れました。
我々はこのまま何食わぬ顔で、永遠に友を騙し、親を欺き、生きていくつもりでした。
しかし我々にとってまったくの誤算だったのは…彼、つまり幸村君の存在でした。
彼は世界で唯一、私と仁王君が試しに一度、入れ替わってから元に戻っていないことを見抜いていたただ一人の人間だったのです!!
なんということでしょうか!
彼は私と仁王君が、入れ替わってニ年もの間ずっと、気がついていながら見て見ぬふりをしていたのです!
そして幸村君がテニス部の部長に就任した日、残酷にも我々にこう言い放った。今まで散々遊び倒してきたお気に入りのおもちゃに、とうとう愛想をつかした子供のように。
「ねぇ、君たちはいつまで入れ替わっているつもりなの?」
我々の魔法は解けたのです。
しかし少しばかり魔法を解くのが遅かった。
私は私自身が何者なのかすっかりわからなくなってしまった。
(そして彼もまた自分自身が何者なのかわからなくなってしまった。)
私は柳生比呂士である。
(いいや、俺は仁王雅治じゃ。)
俺は仁王雅治じゃ。
(いいえ、私は柳生比呂士です)
朝、起きるとまず真っ先に鏡を見るんじゃ。そうして自分の容姿を確かめるナリ。
その日の私の器は何なのか。
今日の俺は仁王雅治。
じゃがのう…中身は?中身はどうなんじゃ?
私の心はどちらなのでしょう?
今こうして話している俺の自我は、仁王雅治という個人なんじゃろうか?それとも柳生比呂士という個人なんじゃろうか?
俺は誰じゃ?
(私は誰なのでしょう?)
私はあなたです。
そして
俺はお前じゃ。
俺がはじめて幸村部長に出会った日、傍らには常に真田副部長がいた。
俺がはじめて幸村部長を愛しいと感じた日、幸村部長は既に真田副部長のモノだった。
俺がはじめて幸村部長の全てが欲しいと願った日、幸村部長はもはや真田副部長無しには生きていけない体になっていた。
幸村部長と真田副部長の間には、二人だけの悠久の時間が流れている。
その間には、何人たりとも足を踏み入れることができないのだ。
俺と真田副部長。
何がそこまで違うのか。
答えは簡単だ。
俺と真田副部長では、生きる時間の軸が違うのだった。
それは微細で、些細な差なのだけれども、決定的な致命傷なのだった。
俺はこの壁を永遠に壊すことはできない。
真田副部長の時間が止まらない限り、俺は俺の望むモノを永遠に手に入れることができない。
「なんつー顔してんの、お前」
そう言って俺の背中をゆっくり押していたはずの丸井先輩が、寄り掛かってきた。ズシリとくる。正直、重い。
「丸井…先輩…重いッス…」
部活がはじまったばかりの放課後。レギュラーは、それぞれペアを組んで、柔軟をしていた。俺は丸井先輩とペアを組んでいた。
「お前が今、何を考えてたのか当ててやろうか?」
丸井先輩は、くちゃくちゃと耳障りな音をたててガムを噛みながら、意地悪く笑った。
「幸村部長、愛シテマス。ドウシテ真田副部長ナンカト。真田副部長ガ憎クテ憎クテ、俺オカシクナリソウ。………どぅ、天才的?」
「…………なんで…わかるんスか…」
「赤也の場合、顔に書いてあんだっつーの。全部な」
そう言って丸井先輩は、チラリと幸村部長を見た。
柔軟の最中、常に俺の視線の先にいた人だ。
幸村部長はベンチで、真田副部長と今日の練習メニューについての確認の最中のようだった。
二人でいることが、さも当然のように存在している二人を見ていると、俺の心はチリチリと暗く静かに燃えはじめるのだ。
真田副部長が憎い。
「真田副部長は…ズルイっすよ…」
丸井先輩は何も言わなかった。
何も言わなかったけれども、俺は話続けた。
止まらなかった。
吐き出してしまいたかった。
「俺が幸村部長と出会う前から、ずっと幸村部長の側にいて。ズルイです。…ズルイです。スタートラインが同じだったら…。同じ…だったら…」
幸村部長は、俺を選んでくれたかも…しれない。
「丸井先輩…俺たまに思うんす…こんなこと考えちゃいけないってわかってるんスよ?でもどうしても…気がつくと…考えちゃうんス…。真田副部長の時が止まっちゃえばいいのにって。そうして、俺が真田副部長の代わりにずっと部長の隣にいるんです。幸村部長が真田副部長と過ごした日々より、ずっと長い時間を、幸村部長の隣で過ごすんです。真田副部長は、過去る時の中で、思い出と共に風化されて行って、幸村部長の中は俺で満たされて行くんです。気が付いた時は、部長の中は俺で溢れていて、俺がいないと生きていけないんです。そうなればいいなって…思っちゃうんです…つまり…つまり」
俺は白い息を吐き出しながら言った。
「真田副部長なんて死ん」
途端に丸井先輩は俺の口をふさいだ。
丸井先輩の唇が、俺の唇を塞いでいた。
時が止まったようだった。
俺の時間は、その時に、本当に止まっていたのかもしれない。
やがてそっと唇を離した丸井先輩は言った。
「赤也、それ以上言っちゃ駄目だ。言葉にしちゃ駄目だ。言葉にすると、お前の中の引っ込みがつかなくなる。わかるだろぃ?」
丸井先輩の目は、優しさと厳しさのまなざしで、満ちていた。
「丸井先輩…俺苦しくて…」
丸井先輩は俺の頭をクシャクシャと撫でた。
「言葉になりそうになったら、俺に言え」
さっきみたいに、俺が食ってやるからな。
俺がはじめて幸村部長を愛しいと感じた日、幸村部長は既に真田副部長のモノだった。
俺がはじめて幸村部長の全てが欲しいと願った日、幸村部長はもはや真田副部長無しには生きていけない体になっていた。
幸村部長と真田副部長の間には、二人だけの悠久の時間が流れている。
その間には、何人たりとも足を踏み入れることができないのだ。
俺と真田副部長。
何がそこまで違うのか。
答えは簡単だ。
俺と真田副部長では、生きる時間の軸が違うのだった。
それは微細で、些細な差なのだけれども、決定的な致命傷なのだった。
俺はこの壁を永遠に壊すことはできない。
真田副部長の時間が止まらない限り、俺は俺の望むモノを永遠に手に入れることができない。
「なんつー顔してんの、お前」
そう言って俺の背中をゆっくり押していたはずの丸井先輩が、寄り掛かってきた。ズシリとくる。正直、重い。
「丸井…先輩…重いッス…」
部活がはじまったばかりの放課後。レギュラーは、それぞれペアを組んで、柔軟をしていた。俺は丸井先輩とペアを組んでいた。
「お前が今、何を考えてたのか当ててやろうか?」
丸井先輩は、くちゃくちゃと耳障りな音をたててガムを噛みながら、意地悪く笑った。
「幸村部長、愛シテマス。ドウシテ真田副部長ナンカト。真田副部長ガ憎クテ憎クテ、俺オカシクナリソウ。………どぅ、天才的?」
「…………なんで…わかるんスか…」
「赤也の場合、顔に書いてあんだっつーの。全部な」
そう言って丸井先輩は、チラリと幸村部長を見た。
柔軟の最中、常に俺の視線の先にいた人だ。
幸村部長はベンチで、真田副部長と今日の練習メニューについての確認の最中のようだった。
二人でいることが、さも当然のように存在している二人を見ていると、俺の心はチリチリと暗く静かに燃えはじめるのだ。
真田副部長が憎い。
「真田副部長は…ズルイっすよ…」
丸井先輩は何も言わなかった。
何も言わなかったけれども、俺は話続けた。
止まらなかった。
吐き出してしまいたかった。
「俺が幸村部長と出会う前から、ずっと幸村部長の側にいて。ズルイです。…ズルイです。スタートラインが同じだったら…。同じ…だったら…」
幸村部長は、俺を選んでくれたかも…しれない。
「丸井先輩…俺たまに思うんす…こんなこと考えちゃいけないってわかってるんスよ?でもどうしても…気がつくと…考えちゃうんス…。真田副部長の時が止まっちゃえばいいのにって。そうして、俺が真田副部長の代わりにずっと部長の隣にいるんです。幸村部長が真田副部長と過ごした日々より、ずっと長い時間を、幸村部長の隣で過ごすんです。真田副部長は、過去る時の中で、思い出と共に風化されて行って、幸村部長の中は俺で満たされて行くんです。気が付いた時は、部長の中は俺で溢れていて、俺がいないと生きていけないんです。そうなればいいなって…思っちゃうんです…つまり…つまり」
俺は白い息を吐き出しながら言った。
「真田副部長なんて死ん」
途端に丸井先輩は俺の口をふさいだ。
丸井先輩の唇が、俺の唇を塞いでいた。
時が止まったようだった。
俺の時間は、その時に、本当に止まっていたのかもしれない。
やがてそっと唇を離した丸井先輩は言った。
「赤也、それ以上言っちゃ駄目だ。言葉にしちゃ駄目だ。言葉にすると、お前の中の引っ込みがつかなくなる。わかるだろぃ?」
丸井先輩の目は、優しさと厳しさのまなざしで、満ちていた。
「丸井先輩…俺苦しくて…」
丸井先輩は俺の頭をクシャクシャと撫でた。
「言葉になりそうになったら、俺に言え」
さっきみたいに、俺が食ってやるからな。
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