ちょっとした短い小説の掃き溜め。
CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。
(※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず)
コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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手塚がランニングを終えて部室に戻ると、部室からは小さな明かりが漏れていた。
ドアを開くと、予想通りの相手がベンチの上で、ふんぞり返るように足を組んでいた。
「ね、手塚、今何時だかわかってる?」
笑顔だけれど、心の中では笑っていないようだ、と手塚は思った。
ドアを開くと、予想通りの相手がベンチの上で、ふんぞり返るように足を組んでいた。
「ね、手塚、今何時だかわかってる?」
笑顔だけれど、心の中では笑っていないようだ、と手塚は思った。
「待っていろ、とは言ってない。」
それだけを言うと、相手は眉を顰めて困ったように溜息をついた。
表情はコロコロと変わるくせに、口元の笑みだけは消えたことがない。
「そういう言い方は、友達を失くすから辞めたほうがいいよ。」
窓の外を眺めながら、その男…不二は言った。
世界はすっかり闇に包まれている。
部室の時計ももうすぐ21時を回ろうとしていた。
手塚が沈黙のままでいると、不二はもう一つ、見せ付けるような大きな溜息をついた。
「君のために言ってるんだよ。君もわかってるとは思うけど、僕は本当はこんなおせっかいな性格じゃないんだ。どうでも良いと思う奴は、何があっても放っておくタイプだよ。君が特別だから言ってるんだ。だって君のことに気がついてあげられるのは、僕しかいないんだもの。」
(そうだな。)
不二の言っていることは、若干引っかかるところが多々あれど正論だろうと思った。不二は、興味を得ることができない人間がどこでのたれ死のうが、飢えて死のうが、関心一つ示さない。言ってしまえば、手塚は不二にとって選ばれた人間だった。
「君は優しすぎるんだよ。」
そう言って不二はまた一つ、溜息をついた。
(すべてばれている…。)
部活が終わった後、皆が帰ったのを待って手塚はグラウンドに出た。
グラウンド100周。
一人で、今までずっと走り続けていた。
「桃城のコト、自分にも責任があると思っているなら僕がはっきり言ってあげるよ。君には何の責任もない。」
「わかっている。」
「わかってない。」
「わかっている…」
押し問答が続く。
関東大会の初戦を控え、青学ではおなじみのレギュラーを決定するためのランキング戦が行われた。
手塚のブロックは手塚、乾がレギュラーの座を獲得し、桃城が落ちる結果となった。
手塚も一つ、小さな溜息をつく。
胸が痛かった。
青学はレギュラーと非レギュラー部員の実力さがあまりにありすぎて、ランキング戦は正直やる前からおのずと結果の見えている試合が多い。
レギュラーとしての実力を兼ねそろえている部員は、9人。それにたいしてレギュラー枠は8。
どうしても、一人、レギュラーから落ちざるを得ない。
たとえどんなに他のレギュラー達よりも勝る実力を兼ねていたとしても、ランキング戦で結果を出せなかった1名はレギュラーから追放される。
そしてその重要なランキング戦のトーナメント表を、組まねばならないのは、部長である手塚自身だ。
トーナメント表を組む作業は、手塚の精神を抉って、削った。
なぜならば、どのブロックに誰と誰を組み込むか、ということを考えることは、暗にレギュラー候補の中から「レギュラー落ちしてもかまわない」と思える生け贄を選ばなければ、ならないからだ。
たとえどんなに平等に割り振ろうと頭で考えていても、現実にはそうはいかない。
4つに分けられたブロックから上位2名がレギュラーとして認められるランキング戦は、つまり力の均衡とバランスを考えレギュラー候補9人を、2人2人2人3人に分けるとする。一つのブロックが必然と一つの○の奪い合いの混戦となり魔のブロックと化してしまうのに比べ、他のブロックは楽々とレギュラー組みが○を獲得する。レギュラーから見れば、どちらのブロックに入るか、それは天と地の差があるのだ。
平等に生け贄を選べたらどんなに気が楽だろう。
しかし、これはあくまでも大会で勝ち続けるレギュラーを選抜するのが、本来の目的である。
先の大会を考えれば、手塚の中の平等は打ち消されてしまうのだ。
例えば、菊丸や大石を魔のブロックに投入するわけにはいかない。なぜならば青学はダブルスの層が薄い。ダブルスで堅実な一勝を得るためには、この黄金ペアを欠くわけにはいかない。
それに本来ダブルスで力を発揮する菊丸のようなプレイヤーの真価は、シングルスだけのランキング戦で問うことはできないのだ。
そして不二もまた、魔のブロックには入れたくないという思いが手塚の中には存在した。
不二は強い。
青学が全国へ勝ち進むためには、どうしてもこの男の力が必要だ。
しかし、勝ちへの執着心が薄いこの男を、魔のブロックに投入することが恐ろしくてならなかった。実際不二がレギュラーから落ちることは今までなかったが、どこで気まぐれを起こすかわからない。
試合の勝敗よりも、スリルを求めている男だ。
まさか不二に限ってそんなことはない…とは思うのだが、スリルを追い求めているうちに、勝てる試合を落としてレギュラー落ちされては…と思うと気が気ではない。
そしてまた河村も、魔のブロックに入れるわけにはいかない。河村はテクニックは若干落ちるが、パワーは青学一だ。とんでもない腕力を持ったパワーヒッターとの対戦は、河村に頼らざるを得ない。
正直、越前もいれたくない。越前はまだ一年でその実力は未知数だが、一試合の経験の中で大きく成長するタイプでもあるし、なによりもこれからの青学を考える上で、越前には一試合でも多く強者と対戦させたいと考えている。彼はこれから手塚の後を引き継いで、青学の柱となってもらいたい。
………いろいろな思考が錯綜し、気がつけばレギュラー間の平等は崩れ落ちたランキング表が出来上がることとなる。
そして、今回は桃城が…その貧乏くじを引いてしまったこととなるのだ。
もちろん桃城にも過失はある。
魔のブロックと言えど、勝ち進めばレギュラー落ちはしない。
勝敗がすべてなのだから、仕方がないと言えば、仕方がない。
それが勝負の世界だった。
「手塚。」
不二は悲しげに苦しむ彼の名前を呼んだ。
優しく手塚を抱き締める。
「桃城はわかってるよ。君のせいだなんて1パーセントも考えたりしない。そんな人間じゃないのは君もよくわかってるだろう。だから君が桃城に科した100周と同じ量を、まるで自分を責めるように影で背負わなくていいんだよ。」
「わかっている…わかってるんだ俺は…」
手塚は不二の胸に顔を埋めた。
不二は優しく手塚の髪を撫でる。
愛する人の腕の中は暖かい。
「わかっているはずなのに…考えずにはいられない。本当に俺にこんな権利があるのかと。本当は皆影で俺を恨んでいるかもしれない。平等ではない俺を。人を切り捨てざるを得ない俺を。」
「手塚、手塚。君は優しすぎるんだよ。かわいそうに。君は食物連鎖の頂点にいるんだ。ライオンが兎を狩る時、ライオンはいちいち兎の気持ちなんか考えなくていいんだ。ただその肉と血を、無心で喰らえばいい。それだけ、なんだよ。」
ねぇ手塚。
世界中の人に愛されようなんて、傲慢だよ。
僕が君を愛してあげる。
たとえ世界中の人々が君に背をむけても、僕はこうして君を抱いているよ。
だからもう自分を責めるのはやめて。
自分をもっと大切にして欲しい。
どうか…
どうか…君を頂点から引きずり下ろせない、未熟な僕を許して。
××××
えっ…なにこれ…不塚?(笑)
とうとう明日は四年に一度の不二誕!
それだけを言うと、相手は眉を顰めて困ったように溜息をついた。
表情はコロコロと変わるくせに、口元の笑みだけは消えたことがない。
「そういう言い方は、友達を失くすから辞めたほうがいいよ。」
窓の外を眺めながら、その男…不二は言った。
世界はすっかり闇に包まれている。
部室の時計ももうすぐ21時を回ろうとしていた。
手塚が沈黙のままでいると、不二はもう一つ、見せ付けるような大きな溜息をついた。
「君のために言ってるんだよ。君もわかってるとは思うけど、僕は本当はこんなおせっかいな性格じゃないんだ。どうでも良いと思う奴は、何があっても放っておくタイプだよ。君が特別だから言ってるんだ。だって君のことに気がついてあげられるのは、僕しかいないんだもの。」
(そうだな。)
不二の言っていることは、若干引っかかるところが多々あれど正論だろうと思った。不二は、興味を得ることができない人間がどこでのたれ死のうが、飢えて死のうが、関心一つ示さない。言ってしまえば、手塚は不二にとって選ばれた人間だった。
「君は優しすぎるんだよ。」
そう言って不二はまた一つ、溜息をついた。
(すべてばれている…。)
部活が終わった後、皆が帰ったのを待って手塚はグラウンドに出た。
グラウンド100周。
一人で、今までずっと走り続けていた。
「桃城のコト、自分にも責任があると思っているなら僕がはっきり言ってあげるよ。君には何の責任もない。」
「わかっている。」
「わかってない。」
「わかっている…」
押し問答が続く。
関東大会の初戦を控え、青学ではおなじみのレギュラーを決定するためのランキング戦が行われた。
手塚のブロックは手塚、乾がレギュラーの座を獲得し、桃城が落ちる結果となった。
手塚も一つ、小さな溜息をつく。
胸が痛かった。
青学はレギュラーと非レギュラー部員の実力さがあまりにありすぎて、ランキング戦は正直やる前からおのずと結果の見えている試合が多い。
レギュラーとしての実力を兼ねそろえている部員は、9人。それにたいしてレギュラー枠は8。
どうしても、一人、レギュラーから落ちざるを得ない。
たとえどんなに他のレギュラー達よりも勝る実力を兼ねていたとしても、ランキング戦で結果を出せなかった1名はレギュラーから追放される。
そしてその重要なランキング戦のトーナメント表を、組まねばならないのは、部長である手塚自身だ。
トーナメント表を組む作業は、手塚の精神を抉って、削った。
なぜならば、どのブロックに誰と誰を組み込むか、ということを考えることは、暗にレギュラー候補の中から「レギュラー落ちしてもかまわない」と思える生け贄を選ばなければ、ならないからだ。
たとえどんなに平等に割り振ろうと頭で考えていても、現実にはそうはいかない。
4つに分けられたブロックから上位2名がレギュラーとして認められるランキング戦は、つまり力の均衡とバランスを考えレギュラー候補9人を、2人2人2人3人に分けるとする。一つのブロックが必然と一つの○の奪い合いの混戦となり魔のブロックと化してしまうのに比べ、他のブロックは楽々とレギュラー組みが○を獲得する。レギュラーから見れば、どちらのブロックに入るか、それは天と地の差があるのだ。
平等に生け贄を選べたらどんなに気が楽だろう。
しかし、これはあくまでも大会で勝ち続けるレギュラーを選抜するのが、本来の目的である。
先の大会を考えれば、手塚の中の平等は打ち消されてしまうのだ。
例えば、菊丸や大石を魔のブロックに投入するわけにはいかない。なぜならば青学はダブルスの層が薄い。ダブルスで堅実な一勝を得るためには、この黄金ペアを欠くわけにはいかない。
それに本来ダブルスで力を発揮する菊丸のようなプレイヤーの真価は、シングルスだけのランキング戦で問うことはできないのだ。
そして不二もまた、魔のブロックには入れたくないという思いが手塚の中には存在した。
不二は強い。
青学が全国へ勝ち進むためには、どうしてもこの男の力が必要だ。
しかし、勝ちへの執着心が薄いこの男を、魔のブロックに投入することが恐ろしくてならなかった。実際不二がレギュラーから落ちることは今までなかったが、どこで気まぐれを起こすかわからない。
試合の勝敗よりも、スリルを求めている男だ。
まさか不二に限ってそんなことはない…とは思うのだが、スリルを追い求めているうちに、勝てる試合を落としてレギュラー落ちされては…と思うと気が気ではない。
そしてまた河村も、魔のブロックに入れるわけにはいかない。河村はテクニックは若干落ちるが、パワーは青学一だ。とんでもない腕力を持ったパワーヒッターとの対戦は、河村に頼らざるを得ない。
正直、越前もいれたくない。越前はまだ一年でその実力は未知数だが、一試合の経験の中で大きく成長するタイプでもあるし、なによりもこれからの青学を考える上で、越前には一試合でも多く強者と対戦させたいと考えている。彼はこれから手塚の後を引き継いで、青学の柱となってもらいたい。
………いろいろな思考が錯綜し、気がつけばレギュラー間の平等は崩れ落ちたランキング表が出来上がることとなる。
そして、今回は桃城が…その貧乏くじを引いてしまったこととなるのだ。
もちろん桃城にも過失はある。
魔のブロックと言えど、勝ち進めばレギュラー落ちはしない。
勝敗がすべてなのだから、仕方がないと言えば、仕方がない。
それが勝負の世界だった。
「手塚。」
不二は悲しげに苦しむ彼の名前を呼んだ。
優しく手塚を抱き締める。
「桃城はわかってるよ。君のせいだなんて1パーセントも考えたりしない。そんな人間じゃないのは君もよくわかってるだろう。だから君が桃城に科した100周と同じ量を、まるで自分を責めるように影で背負わなくていいんだよ。」
「わかっている…わかってるんだ俺は…」
手塚は不二の胸に顔を埋めた。
不二は優しく手塚の髪を撫でる。
愛する人の腕の中は暖かい。
「わかっているはずなのに…考えずにはいられない。本当に俺にこんな権利があるのかと。本当は皆影で俺を恨んでいるかもしれない。平等ではない俺を。人を切り捨てざるを得ない俺を。」
「手塚、手塚。君は優しすぎるんだよ。かわいそうに。君は食物連鎖の頂点にいるんだ。ライオンが兎を狩る時、ライオンはいちいち兎の気持ちなんか考えなくていいんだ。ただその肉と血を、無心で喰らえばいい。それだけ、なんだよ。」
ねぇ手塚。
世界中の人に愛されようなんて、傲慢だよ。
僕が君を愛してあげる。
たとえ世界中の人々が君に背をむけても、僕はこうして君を抱いているよ。
だからもう自分を責めるのはやめて。
自分をもっと大切にして欲しい。
どうか…
どうか…君を頂点から引きずり下ろせない、未熟な僕を許して。
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えっ…なにこれ…不塚?(笑)
とうとう明日は四年に一度の不二誕!
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