ちょっとした短い小説の掃き溜め。
CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。
(※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず)
コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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未来から来た真田に会ったことがある。
と言ったら誰もが失笑するに違いない。
常識的に考えて有り得ないことだ。
でも俺は遠い未来から来た真田に本当に会ったことがあるのだ。
と言ったら誰もが失笑するに違いない。
常識的に考えて有り得ないことだ。
でも俺は遠い未来から来た真田に本当に会ったことがあるのだ。
あれは俺が入院したばかりの頃だった。
体は悪くなる一方だったが、手術に踏切る決心ができないでいた。
手術の成功率に絶望していたのだ。自分の体にメスを入れたところで、治るとは限らない。失敗すれば、二度とテニスができなくなるかもしれない。
一歩を踏み出して、一斉に全てを失うのならば、病魔に任せて緩やかに、少しずつ失うほうが、精神的にも楽に思えた。希望が見出だせない俺は、毎日自殺と衰弱死を秤にかけて揺れ動いているようなものだった。
彼に会ったのは、そんな時だった。
ある日スーツ姿にネクタイを締めた真田が、俺の病室に飛び込んで来たのだ。それは正に仕事帰りのサラリーマンのようだった。
俺は一目見て吹き出した。
「どうしたんだ、真田?。今は部活の時間だろう?それにその格好…ぷ」
クスクスと肩を震わせて俺は笑った。
スーツを来た真田は、とても中学生には見えない。今まで中学生だったことが嘘で、実は社会人でしたというほうがしっくりくる。
「幸村」
心なしか普段より低い声で、真田は言った。
真剣な表情だった。とてもふざけているようには見えない。
「今は…いつだ?」
「3時40分だよ…ぷ」
格好だけじゃない、言動も変だと俺は思った。
「いや…そうではない。日付を…」
「5月30日。」
「今は西暦何年だ?」
何ふざけているんだ、と思ったが真田があまりに真剣な顔をしているものだから、俺も釣られて真面に答えてしまった。
「2008年だよ。」
「…今の首相は誰だ?」
正面に総理大臣の名前を告げると、真田は小さなガッツポーズを作って祈るように呟いた。
「よし、間に合った…」
と。
君は未来から来たの?
唇から零れ落ちそうになった言葉を思わず飲み込んだ。
真田には未来がある。未来の真田が存在するということは、至極当たり前のことだった。この場に現われたということが、おかしいだけなのだ。
しかし俺には約束された未来なんて存在しない。
彼はもうとっくの昔に俺の存在しない世界からやってきた人間なのかもしれない。
俺はそれを尋ねる勇気なんて、持ち合わせていなかった。
「幸村」
よく見れば、いつもよりも少し大人びた顔をした真田が俺を優しく抱き締めた。
優しく甘い匂いがした。未来の香水だろうか。
「時間がない。聞いてくれ。」
真田は俺の耳元に唇を寄せて囁くように言った。
「いいか、幸村。悲観することはない。何も考えずに手術を受けるんだ。」
「い、嫌だ…」
反射するようにそう言っていた。怖かった。自分の意識のないところで、誰かが自分の体を切り刻む。失敗したって誰も責任はとれない。俺は麻酔で眠ったら最後、二度と目を醒ますことができないかもしれない。これはゲームじゃない。俺の人生にリセットボタンは存在しない。
「大丈夫だ。俺が保証する。絶対成功する。お前は手術を受ける。手術は成功する。お前は奇跡的な回復を遂げて、すぐにまたコートに立てるようになる。」
「嘘だ…テニスなんかもう無理だって先生は言ってたんだ…」
蚊の泣くような声で俺は真田にすがった。
「一度しか言わんぞ。」
真田は俺に触れるようなキスをして。
「俺は未来から来た。未来のお前は、今グランドスラムを制そうとしている。手術を受けなければ、お前に未来はない。」
医師と俺、どちらを信じるかはお前次第だ…
ピピッという音がした。それは真田の腕時計からなっているようだった。
「時間だ…」
真田は名残惜しそうに俺から離れた。
そして背を向けて、病室から飛び出して行った。
本当に不思議な出来事だった。顔馴染みの看護婦の誰に聞いてもスーツ姿の真田なんて見かけなかったと答えた。
俺だけが見たのだ。
俺だけが!
俺の中に立ち込めていた霧が晴れた瞬間だった。
この病を宣告されてからはじめて、俺は希望を抱いた。
手術は、絶対、成功する。
俺は、もうすぐ、コートに立てる。
その日の夕方、いつもの制服を着込んだ真田が、代わり映えのしない土産を持って俺の病室にやってきた。
「真田に今日会うのは二度目だ」
そう言って俺はクスクス笑った。
心の底から笑うのは、本当に久しぶりだと思った。
「なんの話だ?」
キョトンとした真田の顔をみて余計おかしくなった。
笑い転げる俺を見て、なんだか今日はやけに機嫌が良いんだな、とか言いながら真田は目を細めて笑った。
「真田には内緒だよ。」
未来の真田に会ったなんて話は俺の秘密にすることにした。
変な夢をみたんだとか頭がおかしくなったとか白けるような陳腐な台詞は、今は聞きたくない。
ただ一つだけ、俺の決意だけは、真田に伝えることにした。
「手術、受けるよ。」
もう迷いはない。
そう言って、俺は真田にキスをした。
それはまさに未来を祝福するキスだった
終
体は悪くなる一方だったが、手術に踏切る決心ができないでいた。
手術の成功率に絶望していたのだ。自分の体にメスを入れたところで、治るとは限らない。失敗すれば、二度とテニスができなくなるかもしれない。
一歩を踏み出して、一斉に全てを失うのならば、病魔に任せて緩やかに、少しずつ失うほうが、精神的にも楽に思えた。希望が見出だせない俺は、毎日自殺と衰弱死を秤にかけて揺れ動いているようなものだった。
彼に会ったのは、そんな時だった。
ある日スーツ姿にネクタイを締めた真田が、俺の病室に飛び込んで来たのだ。それは正に仕事帰りのサラリーマンのようだった。
俺は一目見て吹き出した。
「どうしたんだ、真田?。今は部活の時間だろう?それにその格好…ぷ」
クスクスと肩を震わせて俺は笑った。
スーツを来た真田は、とても中学生には見えない。今まで中学生だったことが嘘で、実は社会人でしたというほうがしっくりくる。
「幸村」
心なしか普段より低い声で、真田は言った。
真剣な表情だった。とてもふざけているようには見えない。
「今は…いつだ?」
「3時40分だよ…ぷ」
格好だけじゃない、言動も変だと俺は思った。
「いや…そうではない。日付を…」
「5月30日。」
「今は西暦何年だ?」
何ふざけているんだ、と思ったが真田があまりに真剣な顔をしているものだから、俺も釣られて真面に答えてしまった。
「2008年だよ。」
「…今の首相は誰だ?」
正面に総理大臣の名前を告げると、真田は小さなガッツポーズを作って祈るように呟いた。
「よし、間に合った…」
と。
君は未来から来たの?
唇から零れ落ちそうになった言葉を思わず飲み込んだ。
真田には未来がある。未来の真田が存在するということは、至極当たり前のことだった。この場に現われたということが、おかしいだけなのだ。
しかし俺には約束された未来なんて存在しない。
彼はもうとっくの昔に俺の存在しない世界からやってきた人間なのかもしれない。
俺はそれを尋ねる勇気なんて、持ち合わせていなかった。
「幸村」
よく見れば、いつもよりも少し大人びた顔をした真田が俺を優しく抱き締めた。
優しく甘い匂いがした。未来の香水だろうか。
「時間がない。聞いてくれ。」
真田は俺の耳元に唇を寄せて囁くように言った。
「いいか、幸村。悲観することはない。何も考えずに手術を受けるんだ。」
「い、嫌だ…」
反射するようにそう言っていた。怖かった。自分の意識のないところで、誰かが自分の体を切り刻む。失敗したって誰も責任はとれない。俺は麻酔で眠ったら最後、二度と目を醒ますことができないかもしれない。これはゲームじゃない。俺の人生にリセットボタンは存在しない。
「大丈夫だ。俺が保証する。絶対成功する。お前は手術を受ける。手術は成功する。お前は奇跡的な回復を遂げて、すぐにまたコートに立てるようになる。」
「嘘だ…テニスなんかもう無理だって先生は言ってたんだ…」
蚊の泣くような声で俺は真田にすがった。
「一度しか言わんぞ。」
真田は俺に触れるようなキスをして。
「俺は未来から来た。未来のお前は、今グランドスラムを制そうとしている。手術を受けなければ、お前に未来はない。」
医師と俺、どちらを信じるかはお前次第だ…
ピピッという音がした。それは真田の腕時計からなっているようだった。
「時間だ…」
真田は名残惜しそうに俺から離れた。
そして背を向けて、病室から飛び出して行った。
本当に不思議な出来事だった。顔馴染みの看護婦の誰に聞いてもスーツ姿の真田なんて見かけなかったと答えた。
俺だけが見たのだ。
俺だけが!
俺の中に立ち込めていた霧が晴れた瞬間だった。
この病を宣告されてからはじめて、俺は希望を抱いた。
手術は、絶対、成功する。
俺は、もうすぐ、コートに立てる。
その日の夕方、いつもの制服を着込んだ真田が、代わり映えのしない土産を持って俺の病室にやってきた。
「真田に今日会うのは二度目だ」
そう言って俺はクスクス笑った。
心の底から笑うのは、本当に久しぶりだと思った。
「なんの話だ?」
キョトンとした真田の顔をみて余計おかしくなった。
笑い転げる俺を見て、なんだか今日はやけに機嫌が良いんだな、とか言いながら真田は目を細めて笑った。
「真田には内緒だよ。」
未来の真田に会ったなんて話は俺の秘密にすることにした。
変な夢をみたんだとか頭がおかしくなったとか白けるような陳腐な台詞は、今は聞きたくない。
ただ一つだけ、俺の決意だけは、真田に伝えることにした。
「手術、受けるよ。」
もう迷いはない。
そう言って、俺は真田にキスをした。
それはまさに未来を祝福するキスだった
終
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