ちょっとした短い小説の掃き溜め。
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(※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず)
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部に復活した幸村の、第一の仕事。
それは全身全力で真田を殴ることだった。
その場には、現役のテニス部員全員と幸村の復活を祝いに馳せ参じたOBや保護者、教師達がいた。
皆の前で、幸村は渾身の力を込めて、真田の顔を平手打ちにした。
真田が吹っ飛び、幸村の掌が軋んだ。
皆が息を飲み、二人の行為を固唾を飲んで受け入れた。
気を失っていた真田が目を冷ましたのは、だいぶ日も落ちた夕刻のことだった。その日の練習は終り、部室に残っているのは真田と幸村だけだった。
頬に添えられた冷たいタオルの存在に気がついた真田は、そっとタオルに手を触れた。ひんやりとした感触が気持ち良い。
「……………痛む?」
幸村が首をかしげて、真田の顔を覗き込む。
真田は相手を愛おしむように目を細めて、微笑んだ。
「覚悟はしていた。」
ゆっくりと幸村も頷いた。
「手加減はできなかった。俺達が犯した罪は、それほどまでに重いのだから。」
関東大会の決勝。あの場で立海大附属は敗退してはならなかった。立海大に負けは許されない。俺達は、立海大テニス部の永きに渡って培われた伝統と誇を汚してしまったのだから。
真田は起き上がると幸村の白く細い手首を優しく掴んだ。
「痛かっただろう。人を殴るということは、殴る側にも苦痛が伴う。辛い役目をさせてしまったな…。すまなかった。」
「いいんだ。俺でなければ、ならなかったんだ。部内で唯一関東に出ていない…汚れていない俺でなければ…あの行為は、ただの茶番劇にしかならなかった。俺でなければ、周囲は納得しないだろうからね。」
「…………では」
「事態は概ね成功したといえるんじゃないかな。皆の意識は、負けを知らない鬼部長の完全復活と全国優勝への期待にむいただろう。関東敗退の象徴たる真田が殴られたことでね。やれやれ。重すぎる伝統と誇というのも問題だな。」
「同感だ。」
関東敗退が決った時から、二人はずっと己の過失と責任について考えてきた。
関東敗退により周囲に与えてしまった不安と失望の思いは、計り知れないものがある。皆の不安を少しでも取り除き、万全の状態で立海大が全国優勝をもぎとるために…。
どうしても罪人の公開処刑が必要だった。
「ねぇ真田」
真田の掌を握り返して幸村は言った。
「どうして死刑というものがあると思う?」
「…………己の罪を償うために」
「贖罪を死とすることは重すぎるとは思わないか?死んだところで、犯した罪が無くなるわけじゃない。生きようと死のうと、犯した罪は地上に残るんだ。永遠にね。つまるところ真田が殴られたところで、青学に負けた事実は変わらないんだ。永遠にね。」
「……………。」
「俺達を知るすべをもたない未来の後輩たちはこう思うだろうね。この年の先輩達は、きっと脆弱だったに違いない。15年もの間無敗を保ち続けてきた伝統あるテニス部に土をつけて凌辱するなんて、なんと愚かな世代だろう。俺達はこうはなるまいってね。俺達は未来からの批判を、甘んじて受け入れる覚悟を決めなければならない。なぜならば、それが俺達が犯した罪であり罰だからさ。」
「………すまなかった。俺が…」
苦痛に歪む真田の声を幸村が遮る。
「真田を責めているわけじゃないんだ。負けたのは何も真田一人の責任じゃない。俺なんて戦う以前の問題だしね。今俺が言いたいことは、そんなことじゃない。」
幸村は優しく微笑んだ。
「死刑というのは、見せしめのためにあるんだ。二度とその罪が起きないように、周りの目に焼き付かせるためにあるんだ。俺が今日真田を痛めつけたことは、俺達の罪や罰とは無縁のところにある。」
「そうか…」
天を仰いで真田は言った。
「俺達は、未来のためにそうしたのだな。」
「そう。俺達は、未来のために生きたんだ。だから誇を持とう。例え先の未来にどんなに蔑まれても…」
真田は幸村を抱き寄せた。
彼の肩にのしかかる目に見えない重圧の重み。
この身に代えても、その全てから彼を開放してあげたいと真田は願った。
「勝とうな、全国。」
それは全身全力で真田を殴ることだった。
その場には、現役のテニス部員全員と幸村の復活を祝いに馳せ参じたOBや保護者、教師達がいた。
皆の前で、幸村は渾身の力を込めて、真田の顔を平手打ちにした。
真田が吹っ飛び、幸村の掌が軋んだ。
皆が息を飲み、二人の行為を固唾を飲んで受け入れた。
気を失っていた真田が目を冷ましたのは、だいぶ日も落ちた夕刻のことだった。その日の練習は終り、部室に残っているのは真田と幸村だけだった。
頬に添えられた冷たいタオルの存在に気がついた真田は、そっとタオルに手を触れた。ひんやりとした感触が気持ち良い。
「……………痛む?」
幸村が首をかしげて、真田の顔を覗き込む。
真田は相手を愛おしむように目を細めて、微笑んだ。
「覚悟はしていた。」
ゆっくりと幸村も頷いた。
「手加減はできなかった。俺達が犯した罪は、それほどまでに重いのだから。」
関東大会の決勝。あの場で立海大附属は敗退してはならなかった。立海大に負けは許されない。俺達は、立海大テニス部の永きに渡って培われた伝統と誇を汚してしまったのだから。
真田は起き上がると幸村の白く細い手首を優しく掴んだ。
「痛かっただろう。人を殴るということは、殴る側にも苦痛が伴う。辛い役目をさせてしまったな…。すまなかった。」
「いいんだ。俺でなければ、ならなかったんだ。部内で唯一関東に出ていない…汚れていない俺でなければ…あの行為は、ただの茶番劇にしかならなかった。俺でなければ、周囲は納得しないだろうからね。」
「…………では」
「事態は概ね成功したといえるんじゃないかな。皆の意識は、負けを知らない鬼部長の完全復活と全国優勝への期待にむいただろう。関東敗退の象徴たる真田が殴られたことでね。やれやれ。重すぎる伝統と誇というのも問題だな。」
「同感だ。」
関東敗退が決った時から、二人はずっと己の過失と責任について考えてきた。
関東敗退により周囲に与えてしまった不安と失望の思いは、計り知れないものがある。皆の不安を少しでも取り除き、万全の状態で立海大が全国優勝をもぎとるために…。
どうしても罪人の公開処刑が必要だった。
「ねぇ真田」
真田の掌を握り返して幸村は言った。
「どうして死刑というものがあると思う?」
「…………己の罪を償うために」
「贖罪を死とすることは重すぎるとは思わないか?死んだところで、犯した罪が無くなるわけじゃない。生きようと死のうと、犯した罪は地上に残るんだ。永遠にね。つまるところ真田が殴られたところで、青学に負けた事実は変わらないんだ。永遠にね。」
「……………。」
「俺達を知るすべをもたない未来の後輩たちはこう思うだろうね。この年の先輩達は、きっと脆弱だったに違いない。15年もの間無敗を保ち続けてきた伝統あるテニス部に土をつけて凌辱するなんて、なんと愚かな世代だろう。俺達はこうはなるまいってね。俺達は未来からの批判を、甘んじて受け入れる覚悟を決めなければならない。なぜならば、それが俺達が犯した罪であり罰だからさ。」
「………すまなかった。俺が…」
苦痛に歪む真田の声を幸村が遮る。
「真田を責めているわけじゃないんだ。負けたのは何も真田一人の責任じゃない。俺なんて戦う以前の問題だしね。今俺が言いたいことは、そんなことじゃない。」
幸村は優しく微笑んだ。
「死刑というのは、見せしめのためにあるんだ。二度とその罪が起きないように、周りの目に焼き付かせるためにあるんだ。俺が今日真田を痛めつけたことは、俺達の罪や罰とは無縁のところにある。」
「そうか…」
天を仰いで真田は言った。
「俺達は、未来のためにそうしたのだな。」
「そう。俺達は、未来のために生きたんだ。だから誇を持とう。例え先の未来にどんなに蔑まれても…」
真田は幸村を抱き寄せた。
彼の肩にのしかかる目に見えない重圧の重み。
この身に代えても、その全てから彼を開放してあげたいと真田は願った。
「勝とうな、全国。」
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