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ちょっとした短い小説の掃き溜め。 CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。 (※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず) コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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世界で一番憎いと思っていた人間から、愛していると言われた。

僕は彼に特別優しいそぶりをしたこともないし、特に気に入られるような言動をしたこともない。
正直、あまり自分からは、彼と関わりたくないと思っていたから、彼に話しかけられた時は、とにかく笑顔で、あたり障りの無い会話を数度繰り返して、軽く流すようにしていたのだ。

だから彼に愛していると言われた時は、正直とまどった。

自分のどこに彼は惹かれたのだろう。

彼の理解できない思考回路に少し好奇心が惹かれたが、やはり僕は彼のことが嫌いだったので、やんわりと諭すようにこう言ってのけた。

「僕は手塚のことが、世界で一番嫌いだ。」










どうして手塚のことが嫌いかと問われれば簡単で、それはただ単なるコンプレックスである。
僕はつねに彼の影であり、敗者である。
いかに僕が天才の異名を司っていても、手塚がいるかぎり僕は永遠に青学ナンバー2であり、永遠に手塚の比較材料である。
僕という物差しを通すことで、手塚の評価はうなぎのぼりとなる。
僕という天才が持ってしても、勝ちを得ることができない人物。
それが手塚国光なのだ、と。
僕だって永遠のNO2という地位に甘んじているわけじゃない。
隠れた努力だってする。
しかし手塚には勝てない。
敗者の僕は、血を流す。
心の闇の中で、永遠にコンプレックスという名の傷を抱えて、のた打ち回るのだ。

「不二が、好きだ。」

今日もまた手塚が僕に愛の言葉を囁く。
僕と二人きりになると、すぐこれだ。
はじめて愛しているという言葉を聴いてからどれくらいの月日が流れたことだろう。
この男は、諦めが悪い。

「でも僕は、手塚のことが嫌いなんだ。」

笑顔でそう返す僕。無表情の手塚。手塚は愛の告白を告げる時も、眉一つ動かさない。
こんな気の利かない冗談を毎日言えるような奴ではないのは確かだから、本当の本当に僕のことが好きなのだろう。
なんでまた男同士で、こんな無生産な会話を毎日続けなければならないのだろう。
二人きりの部室で、ジャージを脱いで、白いワイシャツに腕を通しながら僕らの不毛な会話は続いた。

「しかし、俺はお前のことが好きなんだ。それは仕方のないことだ。」
「うん。でもね、僕も君のことが嫌いなんだよ。それも仕方のないことだろう?」
「しかし…。」
「手塚が何を考えているのか、僕には検討もつかないけど、君はなにか勘違いをしているんじゃないかな?
自分で言うのもなんだけど、確かに僕は普通の一般男性より女っぽい顔をしていると思う。背も低いし、細いし、声だって、君に比べれば、幾分は高いと思う。でもね、僕は男なんだよ?きっと君は、長く僕と一緒に部活をしているうちに、そのへんの見境が解らなくなってしまったんじゃないかな。ねぇ手塚、君はもてるじゃないか。
そんなに僕にしつこく言い寄らなくても、僕なんかよりももっと綺麗で、華奢で、かわいらしい女の子が、君の気持ちを受け入れてくれると僕は思うんだけどね?」
「不二の性別ぐらい、忘れるはずないだろう。」
「う~ん…参ったな…。」

僕は頭を掻いた。どうすれば手塚はわかってくれるのだろう。
僕が君のものになど、なるはずがないという事実を。


「手塚、こんな話を聞いたことはないか?恋愛とは精神病の一種だそうだよ。そんな一時の気の迷いに、君の大事な青春を捧げるわけにはいかないんじゃないかな。君にはもっと時間を有意義に過ごす能力と、環境があるじゃないか。生徒会に勉学に、部活動だ。君には学生生活を営む上での全てが揃っている。手塚には、人望もあるし、頭もいいし、テニスの才能もある。それで十分じゃないか。更にこれ以上のものを望むだなんて、贅沢だと思わない?」

「恋愛感情を抱くことを、精神病だと言うのなら、特定の一人に強く嫌悪感を抱くこともまた精神病の一種ではないのか?」

「………なんだって?」

ロッカーを閉めようとした僕の手が止まる。

「お前はさも、俺には興味がないという口ぶりをするけれど、特定の人物一人に激しい嫌悪感を抱くということは、逆を言えば、その人間が気になってしかたがないということではないのか?」

「へえ?っていうとなに?手塚は、僕が気がついていないだけで、潜在意識の中で君に気があるっていいたいわけ?」

「簡略に言えば、そうなるな。」

何を言ってるんだコイツ。
何を言ってるんだコイツ。
何を言ってるんだコイツ。

ガシャン、と強く僕はロッカーの扉を叩くように閉めた。
イライラする。君と話していると、僕の心は掻き乱されて、うまく呼吸ができなくなる。
どうしてそう君は、僕の心に土足で入ってくるんだ。
どうしてそう君は、平然とした顔で、僕の歪んだ真実を見破るんだ。

君といると動悸がして、うまく笑顔がつくれなくて。
感情がうまくコントロールできなくて。


こんなのいつもの僕じゃない。




「手塚なんて、世界で一番大嫌いだ。」

















××××
続きが閃けば、続き書くかも。

恋愛=精神病=一時の気の迷い(by涼宮ハルヒ)




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