ちょっとした短い小説の掃き溜め。
CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。
(※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず)
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明日この世界は82%の確率で滅亡するらしい。
それは突然訪れた俺達の終りの合図だった。
昨日クタクタになって練習から帰ってきた後、夕飯を食べながらテレビを見ていた時のことだ。
何を見ていたかはよくおぼえていない。くだらないバラエティだった気がする。俺は飯を食うことに夢中だったからテレビの音声は俺の右耳から左耳に抜けて行った。若手お笑い芸人が、司会者にいじられていた時だったと思う。急に画面が変わって、堅苦しいスーツのアナウンサーが写し出された。
「番組の途中ですが、政府からの緊急臨時ニュースをお伝えします。」
アナウンサーの低音の良い声に、俺はやっと顔をあげてまともにテレビを見た。後ろで洗い物をしていた母さんも何事かと顔をあげ、寝転んで雑誌を読んでいたシュンもキョトンと顔をあげた。
更にテレビ画面は変わり、時の総理大臣が気難しい顔で写し出される。
「え~…と…まことに突然で残念なことですが…明日人類は滅亡することになりました。実はつい先ほど地球の約4倍ほどの巨大隕石が82%の確率で明日の日本時間22時22分に地球に衝突するとの情報がNASAより…」
俺もシュンも母さんもポカンとしていた。
総理大臣の様子はまるで、明日の遠足が雨天延期になった場合どうするかといったような時事連絡を淡々と述べる老教師のようだった。
総理大臣自身事態が飲み込めないのか彼の締の言葉は、「国民の皆様一人一人の健闘を祈ります」で締められた。まさに成す術なし。国家総動員で神頼み。どんなに偉い政治家も貧乏人もできることはただ一つ。祈ることだけだった。18%の可能性に。
突然知らされた世界の終りを誰もかもが飲み込めず、他人事のように感じていた。もちろん俺も。
ニュースを見終わった後俺の口から真っ先に出てきた言葉は「へ~。そりゃ大変だな」だった。俺もシュンも母さんも災害の当事者になったことがないのだからしかたがない。戦争とか大地震とか大津波とかそういった物事は全部ブラウン管を通したまるで別の世界のことのように考えていた。俺達は、身に迫る死について考えたことがないのだ。
だから俺達は特に取り乱すけともなくいつものように風呂に入りいつものように寝て、朝を迎えた。そして俺はいつものように学校へ。ただ一つだけ違ったのは、出かけに言われた母さんの言葉。
「タカ。あんた今日帰って来なくても良いわよ。最期の時くらい好きな女の子の手でも握ってなさい。男の子なんだから」
「うぃっす」
俺は片手をあげて家族と別れを告げた。
「健闘を祈る。」
たった一晩で「国民の皆様一人一人の健闘を祈ります」という言葉は、俺の口癖のようになっていた。いや日本人全てのと言うべきか。日本人特有の変な連帯感というものだろうか。俺は登校途中すれ違う人全てに片手をあげて「健闘を祈る」と言い続けた。声をかけた老若男女全てが、俺に笑顔で返事をした。中には俺が声をかける前から「貴殿の健闘を祈る」と笑いながら告げていく者もいた。
俺だけじゃない。それはたった一晩で日本中を巻込んだ流行語になっていた。皆なぜかお祭気分だった。
最期の日くらい楽しく男決めたろ!と思う人間が多いのかもしれない。
学校につくと、普段通り授業を受けて普段通り部活をした。
世界最後の日だと言うのに、こんな代わり映えしない一日を送っている日本人のアドリブの弱さに、俺は悲しみを通り越して愉快でならなかった。
ただ一つ。皆が冷静を装っている傍ら心の底で血眼になって考えているのは、最後の瞬間を誰と過ごすか、だった。
俺の頭の中に浮かんでは消える虚像。
それは三橋だ。
この際だから認めよう。俺は三橋が好きだ。ずっとそのことには目を背けてきたつもりだが、俺は最期の時を三橋と過ごしたいと思っている。そして三橋もそう思っているんじゃないか。漠然とした自信が俺にはあった。
「三橋、今日一緒に帰らないか」
部活が終わると同時にそう告げると三橋はコクリと頷いた。やっぱり。
俺達は無言で手をつないで夜道を歩きはじめた。時刻は現在20時。世界最後の日だからか、普段より部活が終わる日が早い。
道で何人かの人にすれ違ったけれど、男同士で手をつなぐ俺達に野次を飛ばす人間はいなかった。
なんといっても世界終了まであと二時間。
人の目を気にしている暇はない。ささやかな欲望を胸に秘めているならば、開放する時は今しかない。
俺と三橋は、無言のまま公園にやってきてベンチに座った。他にも人がいたけど構いはしない。俺は三橋にキスをした。三橋もまた俺のキスに応えてくる。
言葉はいらない。お互いにもうわかっていることだから。
俺達は残された時間欲望に忠実になればいい。それだけだ。
俺は三橋の服を乱雑にはぎとって体中にキスをした。三橋は小さな吐息を漏らす。三橋の唇を吸い、耳を舐めまわし、胸を撫でまわす。
三橋は一切抵抗せず、俺の全てを受け入れた。
三橋と交わりながら俺は、突然訪れた世界の終りに感謝した。
なぜならこんな日が訪れないかぎり、こんな風に俺と三橋が始まることなどなかっただろうと思うからだ。俺も三橋も明日に怯えて、お互いの関係を崩せないでいた。明後日に怯えて、手さえ繋げずにいた。
ならいっそ明日なんて無くなればいい。
世界は終り、俺達は始まるのだ。
「三橋っ、愛してるよ」
俺は三橋を抱きながら言う。
「おっ俺も…愛して…る」
ああ。ああ。こんな恥ずかしいこと明日が来るなら言えない。次の日三橋とどう顔を合わせたらいいのかわからない。でも今なら言える。なぜなら明日は来ないから。
今まで失った時を、そしてこれから失う時を取り戻すかのように三橋と散々エロティックに交わって、もう死んでもいいだなんて絶頂を味わったあと、俺はふと重大な事実に気がついた。
公園の時計がいつの間にか零時を回っていた。
来ないはずの明日が来た。
いつの間にか人類は18%の可能性に打ち勝っていた。
「…………三橋」
「うひっ」
途端に俺達は真っ赤になった。な、なんてこっぱずかしいことをしてたんだ…俺達は…。
「あっ阿部くん…」
三橋はつないだままの手を愛しそうに見つめて言った。
「俺っこうなった…こと…後悔してないっよ!阿部くんが好きっ…だか…ら」
誰もが来ると信じる明日は、実は仮説でしかなく、誰もが来ないと思った明日も一つの仮説でしかなかった。
だったら俺達は、一日一日を悔いないように生きなければならない。
世界の終りの日、俺達ははじまった。
それは突然訪れた俺達の終りの合図だった。
昨日クタクタになって練習から帰ってきた後、夕飯を食べながらテレビを見ていた時のことだ。
何を見ていたかはよくおぼえていない。くだらないバラエティだった気がする。俺は飯を食うことに夢中だったからテレビの音声は俺の右耳から左耳に抜けて行った。若手お笑い芸人が、司会者にいじられていた時だったと思う。急に画面が変わって、堅苦しいスーツのアナウンサーが写し出された。
「番組の途中ですが、政府からの緊急臨時ニュースをお伝えします。」
アナウンサーの低音の良い声に、俺はやっと顔をあげてまともにテレビを見た。後ろで洗い物をしていた母さんも何事かと顔をあげ、寝転んで雑誌を読んでいたシュンもキョトンと顔をあげた。
更にテレビ画面は変わり、時の総理大臣が気難しい顔で写し出される。
「え~…と…まことに突然で残念なことですが…明日人類は滅亡することになりました。実はつい先ほど地球の約4倍ほどの巨大隕石が82%の確率で明日の日本時間22時22分に地球に衝突するとの情報がNASAより…」
俺もシュンも母さんもポカンとしていた。
総理大臣の様子はまるで、明日の遠足が雨天延期になった場合どうするかといったような時事連絡を淡々と述べる老教師のようだった。
総理大臣自身事態が飲み込めないのか彼の締の言葉は、「国民の皆様一人一人の健闘を祈ります」で締められた。まさに成す術なし。国家総動員で神頼み。どんなに偉い政治家も貧乏人もできることはただ一つ。祈ることだけだった。18%の可能性に。
突然知らされた世界の終りを誰もかもが飲み込めず、他人事のように感じていた。もちろん俺も。
ニュースを見終わった後俺の口から真っ先に出てきた言葉は「へ~。そりゃ大変だな」だった。俺もシュンも母さんも災害の当事者になったことがないのだからしかたがない。戦争とか大地震とか大津波とかそういった物事は全部ブラウン管を通したまるで別の世界のことのように考えていた。俺達は、身に迫る死について考えたことがないのだ。
だから俺達は特に取り乱すけともなくいつものように風呂に入りいつものように寝て、朝を迎えた。そして俺はいつものように学校へ。ただ一つだけ違ったのは、出かけに言われた母さんの言葉。
「タカ。あんた今日帰って来なくても良いわよ。最期の時くらい好きな女の子の手でも握ってなさい。男の子なんだから」
「うぃっす」
俺は片手をあげて家族と別れを告げた。
「健闘を祈る。」
たった一晩で「国民の皆様一人一人の健闘を祈ります」という言葉は、俺の口癖のようになっていた。いや日本人全てのと言うべきか。日本人特有の変な連帯感というものだろうか。俺は登校途中すれ違う人全てに片手をあげて「健闘を祈る」と言い続けた。声をかけた老若男女全てが、俺に笑顔で返事をした。中には俺が声をかける前から「貴殿の健闘を祈る」と笑いながら告げていく者もいた。
俺だけじゃない。それはたった一晩で日本中を巻込んだ流行語になっていた。皆なぜかお祭気分だった。
最期の日くらい楽しく男決めたろ!と思う人間が多いのかもしれない。
学校につくと、普段通り授業を受けて普段通り部活をした。
世界最後の日だと言うのに、こんな代わり映えしない一日を送っている日本人のアドリブの弱さに、俺は悲しみを通り越して愉快でならなかった。
ただ一つ。皆が冷静を装っている傍ら心の底で血眼になって考えているのは、最後の瞬間を誰と過ごすか、だった。
俺の頭の中に浮かんでは消える虚像。
それは三橋だ。
この際だから認めよう。俺は三橋が好きだ。ずっとそのことには目を背けてきたつもりだが、俺は最期の時を三橋と過ごしたいと思っている。そして三橋もそう思っているんじゃないか。漠然とした自信が俺にはあった。
「三橋、今日一緒に帰らないか」
部活が終わると同時にそう告げると三橋はコクリと頷いた。やっぱり。
俺達は無言で手をつないで夜道を歩きはじめた。時刻は現在20時。世界最後の日だからか、普段より部活が終わる日が早い。
道で何人かの人にすれ違ったけれど、男同士で手をつなぐ俺達に野次を飛ばす人間はいなかった。
なんといっても世界終了まであと二時間。
人の目を気にしている暇はない。ささやかな欲望を胸に秘めているならば、開放する時は今しかない。
俺と三橋は、無言のまま公園にやってきてベンチに座った。他にも人がいたけど構いはしない。俺は三橋にキスをした。三橋もまた俺のキスに応えてくる。
言葉はいらない。お互いにもうわかっていることだから。
俺達は残された時間欲望に忠実になればいい。それだけだ。
俺は三橋の服を乱雑にはぎとって体中にキスをした。三橋は小さな吐息を漏らす。三橋の唇を吸い、耳を舐めまわし、胸を撫でまわす。
三橋は一切抵抗せず、俺の全てを受け入れた。
三橋と交わりながら俺は、突然訪れた世界の終りに感謝した。
なぜならこんな日が訪れないかぎり、こんな風に俺と三橋が始まることなどなかっただろうと思うからだ。俺も三橋も明日に怯えて、お互いの関係を崩せないでいた。明後日に怯えて、手さえ繋げずにいた。
ならいっそ明日なんて無くなればいい。
世界は終り、俺達は始まるのだ。
「三橋っ、愛してるよ」
俺は三橋を抱きながら言う。
「おっ俺も…愛して…る」
ああ。ああ。こんな恥ずかしいこと明日が来るなら言えない。次の日三橋とどう顔を合わせたらいいのかわからない。でも今なら言える。なぜなら明日は来ないから。
今まで失った時を、そしてこれから失う時を取り戻すかのように三橋と散々エロティックに交わって、もう死んでもいいだなんて絶頂を味わったあと、俺はふと重大な事実に気がついた。
公園の時計がいつの間にか零時を回っていた。
来ないはずの明日が来た。
いつの間にか人類は18%の可能性に打ち勝っていた。
「…………三橋」
「うひっ」
途端に俺達は真っ赤になった。な、なんてこっぱずかしいことをしてたんだ…俺達は…。
「あっ阿部くん…」
三橋はつないだままの手を愛しそうに見つめて言った。
「俺っこうなった…こと…後悔してないっよ!阿部くんが好きっ…だか…ら」
誰もが来ると信じる明日は、実は仮説でしかなく、誰もが来ないと思った明日も一つの仮説でしかなかった。
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世界の終りの日、俺達ははじまった。
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