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ちょっとした短い小説の掃き溜め。 CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。 (※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず) コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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「チキンレースだ。」
と榛名は言った。

榛名はショーケースの中から黒光りする一丁の拳銃を取り出した。拳銃の中に一発の弾を込める。

「弾は六発込められるが、今この銃には、一発しか入ってない。見ただろ?俺とお前で順に引き金をひいて行く。運の強いほうが勝ち。それだけだ。簡単だろ?馬鹿でもわかる。」

そして榛名は、ほくそ笑んで自分の頭に銃を当てた。

「お前が勝ったら隆也は返してやる。お前のものだ。好きにすればいい。だが俺が勝ったら二度と隆也は返さない。隆也は俺のものだ。どうする、やるか?」

榛名は、この場に来てからずっと小刻みに震えたままの小さな勇者を見据えた。

「う…あ……や、やる…」

視点が定まらないほど震える三橋は、両腕で自分の体を抱きながら頷く。

「馬鹿!やめろっ三橋!」

部屋の片隅で阿部は叫んだ。両腕と両足をしばられた彼はその場から動けない。

「やめろ…やめてくれ榛名…もうこんなことは…三橋にだけは…俺はどうなってもいいから…」

「うっせぇ!お前は黙ってろ!お前は商品なんだよっ!」
榛名の怒声にヒッと三橋は身を縮める。

「おい、お前。やるって言ったんだからな。自分の言葉に責任持てよ。」

榛名はためらいもなく引き金を引く。カチリと軽い音がして、その場は静まり返った。彼は、セーフだ。この世に命をつなぎ止めている。

「次はお前の番だ。」

榛名は三橋に銃を軽く放った。銃は震える三橋の手に軽くあたり床に落ちた。慌てて三橋は拾いあげる。

「っち。どんくせーな。」
(絶対に渡さねぇ。コイツに隆也は相応しくない。隆也は俺の、もの、だ。)

六発中一発弾が込められているというのは、嘘だった。それは簡単な小細工で、はじめの一発以外全て実弾が込められている。

(早く、死ね)


(許せない。こんな非力で弱いだけの弱者が、隆也の隣で笑っていることを。隆也の愛を一身に受けていることを。隆也は俺のものだ。俺だけのものだ。誰にも渡さない。だから早く裁きを受けろ)


三橋はゆっくりと頭に銃口を押し付けた。

「三橋いぃぃ!やめろぉぉ!お前はそんなことしなくていい!しなくていいんだ!」
阿部が泣き叫ぶ。

三橋はガタガタと震えながら、阿部を見つめ、微笑した。
「あっべ…くん…ありがと…う…。俺…阿部君に必要…とされて嬉しかった…阿部君が俺を大切に…してくれた…から…俺…生きてこれた…んだ。俺…阿部君を失いたくない……ダカラ」

「やめろおおおお」
阿部の悲鳴が響き渡る。


「おい、なんの真似だよ。」
三橋はゆっくりと腕を下ろし銃口を榛名にむけた。

「なんの真似だって言ってんだよ!」

一気に青ざめる榛名に、三橋は目に涙を浮かべて、薄ら笑う。

「馬鹿は…榛名さん…だ、よ?俺が…ロシアン…ルーレット本当にやるっだなんて…本気で思った…んですか?」

首をかしげ三橋は続けた。ゾッとするほど冷たい声で。

「俺は…卑怯…なんだ。臆病な卑怯者はルールなんて…守らない。俺は、わかってて…3年間…マウンド譲らなかった人間…だ…。人から後ろ指指されること…だって…蔑まされることだって…慣れてるんっだから…。ねぇ榛名さっん…この銃、一発弾入ってるんですよね?だったら俺は、後五回…引き金を引くだけだ…全てあなたに向けて」

「三橋っ…!貴様!」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!誰にも…誰にも阿部君を取られたくない!奪われたくない!」

「じょ、冗談だろ…やめろ…」
ジリジリと榛名は後ずさった。迂闊だった。三橋がこんな風に抵抗することを考えもしなかった。

「やめろ…嘘を…つ…くな…」
「うああああああああああ」
5発の銃声が鳴り響く。
溢れ出す涙の止まらない目を閉じて三橋が、引き金を引いたのだった。

カチカチと空砲になっても三橋は震えながら引き金を引き続けた。

「うっうう…」

三橋はゆっくりとおそるおそる目を開く。倒れている榛名。窓ガラスが割れてぐちゃぐちゃの室内。静まり返った空間。


「嘘つき…は榛名さんじゃないっか…」
銃声は5発だった。素直に従っていたら死んでいたのは、自分だった。

(あ…あああ…俺…人を…)


「三橋」

愛しい人の声にビクンと三橋の体が反応する。

「あ、ああ阿部く…ん」

「ほどいてくれないか、これ。」
「わ、わかった。」

三橋は銃を投げ捨てて、阿部の元へ走り寄った。きつく縛られた縄を解く。

「三橋っ…!」
両腕が自由になると阿部は三橋を思い切り抱き締めた。
「三橋三橋三橋…良かった…生きてて本当に良かった…」
「あっ阿部くん…おっ俺…人殺しちゃ…っ…た…どどうしよう…最低だ俺…」

「大丈夫。榛名は死んでねぇよ。ショックで気失って倒れただけだ。俺目見開いて見てたから。お前の銃弾、一発も榛名には当たってねぇよ」

「う、嘘…だぁ…」

「嘘じゃねーよ。お前こそ榛名のことビビって全然見てねーだろ。だいたいこの部屋の有様見てみろよ。散々流れ弾が飛んできて被弾したからこうなったんだろ。」

「うっ…あああ…怖かった…怖かったよぉ…」

腕の中で大粒の涙を零して泣きじゃくる三橋の背中を優しく擦りながら阿部は言った。
「ありがとな三橋…助けにきてくれて。俺と榛名のいざこざに巻込んじまって悪かった…ごめんごめんな…。愛してるよ三橋…俺にはお前しかいないから…」

三橋の顎を片手で掬い上げて、阿部は唇を重ねた。久しぶりの三橋の唇。不安と緊張からかカサカサに渇いている。涙はあんなにも零れているのに。阿部は優しく三橋の唇を舐めながら涙を拭ってやった。

その時。


冷たくて硬い何かが、コツンと阿部の後頭部に押しつけられた。

「残念だよ隆也…。俺はこんなにもお前を愛していたのに…」

「榛…名…ごめん…」

三橋を抱く腕に強く力を込める。三橋もぎゅっと強く阿部を抱き締め返す。阿部の温かい腕の中で三橋は震えることを忘れた。

「俺のものにならないなら…他人のものになると言うのなら…いっそ。」





「いっそ散れ。」






2発の銃声が、世界に響き渡った。

























×××××
榛名ファンの皆様に全力で土下座します。すいませんでした…。
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