ちょっとした短い小説の掃き溜め。
CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。
(※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず)
コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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自分の部屋に戻った途端に緊張の糸がプツリと切れて涙が溢れ出した。
叶は扉を背にしてうずくまり号泣した。
静かな薄暗い部屋に嗚咽が響く。
織田は今頃何を想っているだろうか。
(俺の演技…見破られなかったよな…)
少し不安になったけれどあの様子では大丈夫だろう。
織田は非常に戸惑っていた。
叶が本気であると悟った顔をしていた。
(ごめんな…織田…)
よろよろと立ち上がり制服のままベッドに倒れこむ。
凄まじい疲労感を感じる。 人に嘘をつくのはこんなにも気力を吸い取られるものなのかと叶は考える。
いや…嘘をついたから…じゃない…
(俺…織田を捨てたんだよな…)
ジワリとまた涙が込み上げてきて視界が歪む。
(こうするしかなかったんだ…)
ずっと考えていた。
織田の部屋で関西の大学の入学案内を目にしてしまったその日から。
織田は群馬の人間じゃない…生まれた場所に帰りたいと思うのは当たり前の選択だ。
でも。
織田と離れ離れになって生きていく自信がなかった。
織田を笑顔で見送る勇気もない。
泣きながらすがってしまいそうだった。
俺を捨てないでくれ。
胸の中で何万回唱えただろう。
別れるその日が訪れた時、その言葉は制止する叶の理性を打破って口から飛び出してくるに違いなかった。
3年間ずっと織田に甘えて生きてきたと思う。
三橋と別れて、ズタズタだった叶の心を織田は文句一つ言わずに受け止めて温めてくれた。
―…叶、俺待つよ。いくらでも待ったる。叶が三橋を忘れて新しい恋がしたいって思うようになるまでずっと待っとるから。
(織田は俺に無償の愛をくれた。三橋とは違う…三橋とは違う恋だった。三橋はいつも不安定で、俺が支えてやらないとアイツ消えちまいそうで…俺は不安で仕方がなくていつも三橋のことを考えていた。俺は必死だった…。織田は…違う。底知れない安心を俺にくれた。いつも優しくて…優し過ぎて俺…どんどんわがままになってた。アイツといると心地よくて…三橋の時みたいな激しいドキドキはなかったけど…俺は織田と一緒にいることがたまらなく好きだった)
織田と離れ離れになるなんて耐えられない…。
だから先に突き放さなきゃいけないって思った。
織田から切り出されたら甘えてしまう。
行くなって泣きわめくに決っている。
自分からこうするしかなかったんだ……。
「俺の愛する人は…いつも俺から離れて行っちまう…」
シーツに涙が染みて頬に触れる部分がひんやりと冷たい。
とその時…
携帯が鳴った。
この着信音は…。
「もし…もし」
「もっもしもし…?」
懐かしい愛しい声が耳に飛び込んできた。
三橋。愛していた人。三橋には今新しい恋人がいることも知っているし、三橋は叶と織田の関係も知っている。お互いの恋愛関係は一切無くなっても今でも大切な人であることに変わりはなかった。
恥ずかしがり屋の三橋から滅多に電話がかかってくることは無い。
だからつい自分が現在進行形で泣いている事実も顧みずに通話ボタンを押してしまった。
「しゅ、修ちゃ…ん」
「廉?…どうした?」
「……修ちゃん…今泣いて…る?」
ズキンと胸が痛む。
「なんで…わかった…?」
「嗚咽みたい…な音が…聞こえた…から」
「……………。」
「ど、どうしたっ…の?」
「…………織田と別れたんだ。」
どうしてだろう。すんなりとこんなことを三橋に話ている自分がいる。
辛くて辛くて辛くて…藁にもすがる思いだったのだろうか。誰でも良い…話を聞いて欲しい。
懺悔がしたい。
「どっどうして…?」
「織田が…卒業したら関西に帰っちまうんだ…。俺…耐えらんなくて…」
「………………。」
数秒間黙り込んだ後、三橋が言った。
「なんで…追いかけない…の?」
「へ?」
「しゅ…修ちゃんも関西に行けば…辛くない、よ?」
「俺が…?」
考えたこともなかった。
俺が織田を追いかけて離さなければ良い。なぜそのことを考えなかったんだろう。
織田はいつも俺に無償の愛をくれたから、俺は織田に何かをして貰うことに慣れてしまって…いつの間にかそれが当たり前になっていて…俺が何かをしてやるなんて考えもしなかった。
「あっ…あのね修ちゃん…」
たどたどしく三橋が言った。
「おっ俺…も阿部くん…と離れ離れになりたく…無くって…大学でも一緒に…野球がしたく…て…今日言ったんだ…!阿部君っと…同じ大学に行きたいっ…て…俺は頭悪い…から阿部君と釣り合わない…かも…だけっど…阿部君は志望校のランク…変えないで…いいから…俺頑張って勉強する…から一緒にいさせて…くださいって…言ったんだよ…」
「…そして阿部はなんつったんだ?」
「……黙って抱き締めて…くれたよ…それからありがとうって…頑張ろうなって言ってくれた…よ…勇気を出して良かったぁ…」
「そっか。良かったな、三橋」
叶は思う。
なんとなく三橋はこの話を俺にしたかったのだろうと。
一年の頃ならばこんな話を聞かされては、胸が引き裂かれそうだった。三橋が好きだったから。
でも今は違う。三橋の話を穏やかに受け止めている自分がいて…自分のことのように嬉しく祝福している自分がいて。
(俺…織田が好きだ…)
穏やかに別れを告げて電話を切る。
織田にもう一度会いに行こう。 今度は辛い未来のためではない。明るい未来のために…。
先ほどは自分が傷付きたくないばかりに織田に酷いことを言ってしまった…。
許してもらえないかも知れない…でも俺は許しを請う。
そして
俺の覚悟を伝えよう。
紛れもない本物の覚悟を。
続
××××××
終わらなかった…(汗)次回簡潔します
叶は扉を背にしてうずくまり号泣した。
静かな薄暗い部屋に嗚咽が響く。
織田は今頃何を想っているだろうか。
(俺の演技…見破られなかったよな…)
少し不安になったけれどあの様子では大丈夫だろう。
織田は非常に戸惑っていた。
叶が本気であると悟った顔をしていた。
(ごめんな…織田…)
よろよろと立ち上がり制服のままベッドに倒れこむ。
凄まじい疲労感を感じる。 人に嘘をつくのはこんなにも気力を吸い取られるものなのかと叶は考える。
いや…嘘をついたから…じゃない…
(俺…織田を捨てたんだよな…)
ジワリとまた涙が込み上げてきて視界が歪む。
(こうするしかなかったんだ…)
ずっと考えていた。
織田の部屋で関西の大学の入学案内を目にしてしまったその日から。
織田は群馬の人間じゃない…生まれた場所に帰りたいと思うのは当たり前の選択だ。
でも。
織田と離れ離れになって生きていく自信がなかった。
織田を笑顔で見送る勇気もない。
泣きながらすがってしまいそうだった。
俺を捨てないでくれ。
胸の中で何万回唱えただろう。
別れるその日が訪れた時、その言葉は制止する叶の理性を打破って口から飛び出してくるに違いなかった。
3年間ずっと織田に甘えて生きてきたと思う。
三橋と別れて、ズタズタだった叶の心を織田は文句一つ言わずに受け止めて温めてくれた。
―…叶、俺待つよ。いくらでも待ったる。叶が三橋を忘れて新しい恋がしたいって思うようになるまでずっと待っとるから。
(織田は俺に無償の愛をくれた。三橋とは違う…三橋とは違う恋だった。三橋はいつも不安定で、俺が支えてやらないとアイツ消えちまいそうで…俺は不安で仕方がなくていつも三橋のことを考えていた。俺は必死だった…。織田は…違う。底知れない安心を俺にくれた。いつも優しくて…優し過ぎて俺…どんどんわがままになってた。アイツといると心地よくて…三橋の時みたいな激しいドキドキはなかったけど…俺は織田と一緒にいることがたまらなく好きだった)
織田と離れ離れになるなんて耐えられない…。
だから先に突き放さなきゃいけないって思った。
織田から切り出されたら甘えてしまう。
行くなって泣きわめくに決っている。
自分からこうするしかなかったんだ……。
「俺の愛する人は…いつも俺から離れて行っちまう…」
シーツに涙が染みて頬に触れる部分がひんやりと冷たい。
とその時…
携帯が鳴った。
この着信音は…。
「もし…もし」
「もっもしもし…?」
懐かしい愛しい声が耳に飛び込んできた。
三橋。愛していた人。三橋には今新しい恋人がいることも知っているし、三橋は叶と織田の関係も知っている。お互いの恋愛関係は一切無くなっても今でも大切な人であることに変わりはなかった。
恥ずかしがり屋の三橋から滅多に電話がかかってくることは無い。
だからつい自分が現在進行形で泣いている事実も顧みずに通話ボタンを押してしまった。
「しゅ、修ちゃ…ん」
「廉?…どうした?」
「……修ちゃん…今泣いて…る?」
ズキンと胸が痛む。
「なんで…わかった…?」
「嗚咽みたい…な音が…聞こえた…から」
「……………。」
「ど、どうしたっ…の?」
「…………織田と別れたんだ。」
どうしてだろう。すんなりとこんなことを三橋に話ている自分がいる。
辛くて辛くて辛くて…藁にもすがる思いだったのだろうか。誰でも良い…話を聞いて欲しい。
懺悔がしたい。
「どっどうして…?」
「織田が…卒業したら関西に帰っちまうんだ…。俺…耐えらんなくて…」
「………………。」
数秒間黙り込んだ後、三橋が言った。
「なんで…追いかけない…の?」
「へ?」
「しゅ…修ちゃんも関西に行けば…辛くない、よ?」
「俺が…?」
考えたこともなかった。
俺が織田を追いかけて離さなければ良い。なぜそのことを考えなかったんだろう。
織田はいつも俺に無償の愛をくれたから、俺は織田に何かをして貰うことに慣れてしまって…いつの間にかそれが当たり前になっていて…俺が何かをしてやるなんて考えもしなかった。
「あっ…あのね修ちゃん…」
たどたどしく三橋が言った。
「おっ俺…も阿部くん…と離れ離れになりたく…無くって…大学でも一緒に…野球がしたく…て…今日言ったんだ…!阿部君っと…同じ大学に行きたいっ…て…俺は頭悪い…から阿部君と釣り合わない…かも…だけっど…阿部君は志望校のランク…変えないで…いいから…俺頑張って勉強する…から一緒にいさせて…くださいって…言ったんだよ…」
「…そして阿部はなんつったんだ?」
「……黙って抱き締めて…くれたよ…それからありがとうって…頑張ろうなって言ってくれた…よ…勇気を出して良かったぁ…」
「そっか。良かったな、三橋」
叶は思う。
なんとなく三橋はこの話を俺にしたかったのだろうと。
一年の頃ならばこんな話を聞かされては、胸が引き裂かれそうだった。三橋が好きだったから。
でも今は違う。三橋の話を穏やかに受け止めている自分がいて…自分のことのように嬉しく祝福している自分がいて。
(俺…織田が好きだ…)
穏やかに別れを告げて電話を切る。
織田にもう一度会いに行こう。 今度は辛い未来のためではない。明るい未来のために…。
先ほどは自分が傷付きたくないばかりに織田に酷いことを言ってしまった…。
許してもらえないかも知れない…でも俺は許しを請う。
そして
俺の覚悟を伝えよう。
紛れもない本物の覚悟を。
続
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終わらなかった…(汗)次回簡潔します
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