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ラストです。
昔からヤンデレ萌えだったようです;;
具合が悪いから帰ることにしよう。
そう思って俺は部室を出た。
手塚に一言言えば、大丈夫だろうそう思った。
なんだか大石に顔を合わすのも英二に顔を合わせるのも嫌だった。
部室を出ると、壁に手塚が寄りかかっていて驚いた。
「てっ手塚!?」
いつからいたんだろうか。
「不二…」
手塚は僕を見下ろして言った。
「不二は菊丸が好きなの…か?」
視線が定まっていなかった。物凄く緊張しているのだろうか。僕が英二にキスしたのがそんなに衝撃だったのかな。
「好きじゃないよ。英二は友達」
うつむいて言った。背中が痛い。でも事実だ。
「俺は…不二が…好きだ。付き合ってくれないか?」
どんな思いで手塚はこの台詞を吐き出したのだろう。
「………。」
沈黙が続いた。
いつも背中に注がれる視線がこの時ばかりは顔面に注がれていた。
痛い…その痛みは部位が変わったと言うだけで死にそうなほど痛みが強まった。
「僕は…」
チラリと手塚の表情を覗く。
「手塚も好きじゃない。」
そうはっきり言ったら後の台詞は糸も簡単に喉から滑り出て来る。
「僕は男だよ?手塚の思考回路は理解不能だな。頭がおかしいんじゃない?」
「不二…」
手塚が眉を潜めた。悲壮感ただよう表情が更に僕を追い立てた。
「気持ち悪いよ。もう辞めて。手塚はいつも僕を見てた。ずっと気持ち悪いと思ってた。もううんざりだから」
そう言って俺は逃げるようにその場を走り去った。
傷ついた手塚の顔。
心地よい。
僕は手塚を傷つけた。
僕は手塚に勝ったんだ。
そう思った。
僕は勝った。手塚の負けだ。
僕は勝った。
そう思うとうれしくてうれしくて笑みがこぼれ落ちる。
「手塚に勝った…?」
こんなことで勝って…そんなことで…本当に嬉しいんだろうか。
「は…はは…」
逃げ帰って階段を駆け上がって自分の部屋に飛び込んだ僕の心はいつの間にか冷静さを取り戻していた。
「嬉しいに決まってるじゃないか!」
バン
と僕は鞄を壁に思い切り投げた。
「僕は手塚に勝ったんだ!」
なぜこんなにイライラしなければならないのだろう。
僕は手当たり次第に本棚の本や机の上のものを壁に投げつけた。
「僕は…!」
気が付けば僕は大量の涙を流していた。
気が付けば僕の周りには何もなくなっていた。
何もない…!
何も…!
「僕は…テニスで勝ちたいんだ…」
苦しくて僕はわあわあ泣いた。こんなに泣いたのは、いつぶりかわからない。
僕はいつもテニスと私生活を混同してしまう悪い癖があった。
ニコニコ笑って自分の本当の気持ちをひた隠していれば、相手は僕の心理が読めず試合に負けることがない。
僕はいつも笑った。
そうすれば負けない。
気が付けば、僕は私生活でも誰にでも笑顔を向けるようになった。
つらいことも嫌なことも笑っていれば過ぎ去った。
本当の自分を見せなければ、人に忌み嫌われることもない。
僕の生きる術をぶち壊したのは手塚だ。
僕の仮面を引きちぎったのは手塚だった。
手塚なんか嫌いだ。
手塚のせいで気が付いてしまった。
僕は誰にも自分の素顔を見せたことがない。
本当の自分を誰も知らない。
僕は世界で一番孤独で滑稽なピエロだ。
月日が流れるのは早い。
僕と手塚はギクシャクした関係のまま大会は進んで行った。
しばらく手塚は僕を見なかったけれど気が付けば手塚はやはり僕を見ていた。
言葉は必要以上に交わさない。だけど射るような熱の籠もった視線だけが手塚の変わらない恋心を物語っていた。
運命の氷帝戦で…手塚は負けた。
手塚は肩を故障した。
何をやってるんだと僕は手塚を殴りたくなった。
僕が何をしても勝てない手塚が…負けることがあるなんて。
歯がゆかった。
それから手塚は肩の治療をするため九州に行ってしまった。
慌ただしい日々だった。
手塚と別れて生活する日常がこんなにも早く訪れるなんて僕は露ほどにも考えたことがなかった。
「ふ~じっ!」
あれからゴールインしたらしい黄金ペアの片割れが後ろから僕に抱きついてくる。
手塚との一件以来僕は英二には手を出さないようにしてはいるんだけど、英二はよくスキンシップのつもりか抱きついてくる。
「ん?どうしたの英二?」
「不二が悲しそうな顔してた。手塚がいないと寂しい?」
ギクリとした。
僕は今日も普通に普段通りに笑っているつもりだった。
「そんなことないよ」
フフッと笑うと英二は眉を寄せた。
「不二のうそつき。」
これには苦笑するしかなかった。確かに手塚がいないと心に穴があいたようだった。
でもそれは手塚が恋しいわけじゃない。
手塚の視線が…あの射るような熱視線を感じることができない…ただそれだけのことで、僕はもうどうにかなってしまいそうだった。
狂っていたのは手塚なんかじゃなく…僕だったのかな…。
手塚のことを思い出すだけでこんなにも胸が痛いんだ。
「ふっ不二?!」
英二が驚いて僕の顔を見た。
ああ…また…。
僕はしらぬまに泣いていしまう。
手塚を思い出すだけで無意識に。
あの眼が恋しくて。
「どこか痛いの!?不二?!」
ポタポタと掌に滴が垂れ落ちる。
「痛い?」
痛い…胸が潰れそうだ。
「あっははは…」
泣きながら僕は笑った。
僕はおかしくなってしまった。
狂ってる。
手塚の視線が欲しいなんて。
「あははははははは…は…」
なんで僕は笑っている?
なんで僕は泣いている?
なんで僕は…
僕の本当の気持ちは…どこ!?
頭が痛い…心が痛い…
「うああああああああ!!」
わけがわからなくなって僕は絶叫して頭を抱えてうずくまった。
痛いよ…手塚…
狂ってる…何もかも
君がいないだけでおかしくなる。
苦しい…。
苦しいんだ手塚…。
僕を見て。
狂った視線で僕を見てよ。
狂っているのは僕だけじゃないって教えて…。
手塚…。
君に会いたいんだ…。
人を愛することがこんなに苦痛だったなんて知らなかった。
了
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