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ちょっとした短い小説の掃き溜め。 CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。 (※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず) コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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昔(1、2年前)くらいに書いた塚不を発掘したので載せます。


背中にいつも感じていた。

射るような痛い熱情的な視線。虫眼鏡で太陽の光を照らされるようで… まるで背中がやけ焦げてしまいそうだった。

僕が気が付かないと思ったら大間違いだ。

 

 

 

熱視線

 

 

「えーいじっ」

「うにゃぁっ!」

冷えたタオルをそっと英二の首筋にあてた。案の定というべきか…予想通り大声をあげて反応する相手を見て自然と笑みがこぼれ落ちる。

「ふ~じ~!」

くるりと振り返った英二は、ニヤリと笑った。

「よくもやったにゃあ!!」

そう叫んで僕の両脇をくすぐってきた。これはつらい。

「あは、あははははは!!」

これ見よがしに大声で笑いながら僕は身をよじった。

 

感じる。

背中に射るような熱視線。

 

僕が誰かとじゃれつくと途端にそれは強くなる。

 

相手が英二の時は更に強い。

 

ゾクリと

 

身震いした。しかしそれがまた癖になる。

 

「よくもやったね…」

俺は背中に神経を寄せながら英二の脇をくすぐる。

「やっやめるにゃあ…!ぎゃははは!」

 

英二は涙目になってころげまわる。

きっとそろそろ…。

 

名前を呼ばれる。

 

「不二」

 

思った通り。普段と変わらぬ低音が僕の名前を呼んだ。

 

「こっちにこい、不二」

 

言われた通り僕は英二のそばを離れ相手に近づく。

 

ただし

 

ふてくされたような顔をするのは忘れない。

 

君にはむやみに笑顔を振り向かないって決めてるんだ。

 

「なにか用?手塚」

 

英二とふざけあっているのを邪魔したとばかりに非難の視線で相手を見つめる。

 

「部活中にふざけるな」

「僕だけじゃないよ、英二もだ」

英二、というところを自然と強く発音する。

ただでさえ険しい手塚の顔が、更に険しくなる。

「言い訳するな」

「はいはい」

「不二」

「別にちゃかしてるわけじゃないよ。望みは何?グランド二十周かな?」

「いや…走らなくていい。」

「ふーん」

「ここにいろ」

「はいはい」

 

俺はわざと苦笑して肩をすくめてみせた。

こうなることはわかっていた。

隣に立つ手塚が妙にイラついているのが愉快でならなかった。

 

手塚は僕に惚れてるんだ。

 

というのはすぐにわかった。

手塚は隠しているみたいだけど不器用だから僕はすぐに知ってしまった。

 

手塚は僕が誰かといると絶対僕を見る。本人に自覚があるかどうかは謎だが、僕は手塚の視線を感じるたびにゾクゾクした。

とりわけ英二とじゃれている時は強い。

あまりに行き過ぎたことをすると手塚は我慢できなくなって僕を呼ぶんだ。

 

手塚のどす黒い嫉妬心や執着心、独占欲なんかがストレートに伝わってくる。

 

そんな手塚の心中をきっちりと把握したうえで、手塚を掌の上で転がすように弄ぶのはこの上ない快楽を僕にもたらすのだ。

 

はっきり言うが僕は手塚なんか好きじゃない。手塚の人柄は嫌いじゃないが、恋愛感情とはまた別問題だ。

同性愛に理解もないし、どうせつきあうのならふわふわした可愛らしい女の子が良いに決まっている。

 

僕はどうしてもテニスで勝てず打ちのめされて瀕死の状態である自尊心を少しでも回復させたい…ただそれだけの欲求のために手塚で遊んでいるにすぎなかった。

 

それでも初めの頃と比べると僕の悪戯は日に日にエスカレートしていくようだった。

 

もっともっと僕を見て欲しい。

狂うほどに僕を見て。

 

そう考えるようになった僕の思考回路も相当いかれてきたように思われる。

 

手塚はテニスでは僕を見ない。

 

手塚をライバルと思っているのは僕だけじゃない。

 

僕なんかより強い選手が何人も手塚をライバル視している。

 

テニスの世界において僕は手塚を振り向かせることも、束縛することも焦がれるほどに胸を苦しめることもできない。

 

だから手塚が僕に惚れてくれたことは神様にどんなに感謝しても感謝しつくせないほどだった。

 

手塚が僕に気があるなら僕は手塚を追いつめ苦しめることができるのだから。

 

これはテニスに勝てない八つ当たりでもあったし、手塚に勝てない僕の苦しみを少しでも味あわせたかったからでもあった。

 

とにかく僕は必死だった。

 

 

 

 

ドウスレバ手塚ハモット苦シムノカ

 

 

 

モットモット手塚を苦シメタイ

 

「えーいじっ」

「ん?」

それからしばらくして僕の行為は英二の唇を奪うまでとなった。 僕は無防備な英二にチュッと軽いキスをした。

「ふじっ~!なにするにゃあああ!」

英二は真っ赤になって怒って僕を追いかけまわした。

「英二がボーっとしてるのが悪いよ」

そう言って英二に追いかけられながらも僕は背中に全神経を集中させていた。

 

強い視線ー…

 

ゾクリと身震いする。

 

熱くて痛い、絡まるようで直線的だ。

 

そろそろ手塚は僕の名前を呼ぶだろうか。

 

「不二」

 

と怒りを秘めた声で僕を呼んだのは手塚ではなかった。

 

「不二、話がある。ちょっといいか」

珍しく凍りのように冷たい表情をした大石がそう言って痛いくらいの握力で僕の右腕をつかんで僕を誰もいない部室へ引っ張って行く。

「不二」

 

大石は僕を睨んで言った。

 

「最近英二にちょっかいだしてるみたいだけどどういうつもりなんだ?」

 

手塚よりも先に爆発させてしまったのはどうやら副部長のほうらしかった。

「大石…。英二が好きなの?」

クスリと笑う。

 

まさか同性愛者が部内にもう一人潜んでいるとは思わなかった。

「ああ、好きで悪いか!」

失笑したのがしゃくに触ったのからしくもない副部長は僕の襟をつかんでロッカーに叩きつけた。

「不二のような人の心をなんとも思ってない奴には英二はやれない!」

大石は凄い目つきで僕を睨んだ。こんな怒り方ができる人間だなんて知らなかった。

 

「次にまた英二に変な真似したら許さないからな!」

そう罵倒して大石は荒々しく部室を出ていった。

 

バタンと

 

戸が大きな音を立て痛そうに閉まる。

 

ズルズルと俺はロッカーに背を預けてしゃがみこんだ。

 

大石に思い切り背中を叩きつけられたせいで、背中が痛くてジンジンした。

 

「あははは…」

 

辛いた笑いが自然とこぼれだす。

何をやっているんだ僕は。

 

馬鹿らしくて馬鹿らしくて僕は笑って、少し泣いた。

 

本気で人を好きになるなんて馬鹿げている。

 

「あははははははは…は…」

 

僕は今世界で一番醜い生き物と言えるかもしれない。

 

 

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