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ちょっとした短い小説の掃き溜め。 CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。 (※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず) コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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好いとうよ、と思い切って告げた時彼は顔色一つ変えなかった。

「ふ~ん…」

ジト目でこちらを見ている。
これは積年積もりに積もった想いを噴出した仁王にとって、想定外の出来事だった。

「あのな、幸村…」
「で、今度は俺をペテンにかけるつもりなんだね?」

笑顔でそう言われた。
疑問口調だが彼の笑顔は断定的だ。

仁王はガクッと肩を落とした。

身から出た錆。
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「うんしょっと」

幸村精市は本棚の一番上の棚に手を伸ばした。

背伸びをしたが、指先一つお目当ての本に届かない。

「う~ん…」


届いた!

そう思った瞬間にバランスを崩した。

「うあっ!」


倒れる…!と思ったが誰かの優しい腕に抱き留められた。

「大丈夫か?」
「あ~…えっとありがとう。」

ニコリと笑いかけたが、その長身の男は愛想笑い一つしなかった。
幸村が手を伸ばしてとれなかった本を簡単にとり、幸村に手渡す。

「これが欲しかったんだろう…」
「……ありがとう。えっと……」

「柳蓮二だ。」
「柳蓮二…君。」


男はその時はじめて端整な顔に微笑を浮かべた。

「それじゃあな、幸村精市君」

ヒラヒラと手を降りながら男は去っていく。



「…………俺のこと知ってるんだ…」

だとしたらテニスをする人なのだろう。


今日はじめてある部活で会うかもしれない。

「……蓮二か…」

一冊の本を抱き締めて幸村は窓の外を眺めた。

桜が満開の中学生になってはじめて迎える春だった。









時には夢を見る。

山のようなケーキをただひたすら食べ続ける至福の夢。
甘くて、美味しい夢。


「夢の中でもケーキを食べれる俺って本当に天才的だと思わない?」

「思わない。」

薄そうな生地のパジャマを見にまとった幸村は、指先で丸井の口端についたままの生クリームを拭ってやる。

「あれ?ついてた?」
頭を掻きながら丸井は箱の中の次のケーキに手を伸ばした。
「ねぇブン太…」
「ん?」

その白くて細い腕からは思いもつかぬ腕力で幸村は丸井をベッドに押し出す。

突然視界に入り込んだ天井を丸井はわけがわかぬまま不思議そうに見つめた。

「食べ物をガツガツ食べる夢はさ…欲求不満って意味なんだよ?知ってた?」


ケーキよりも甘そうな声で幸村は嘲笑った。



何よりも君が食べたい。
俺の愛する人は遠い人。

遠くて、遠くて、追いついたと思ったらすぐ手が届かなくなる。

どこまでも遠い人。





立海大付属高校のテニス部の活動をフェンス越しに切原赤也は眺めていた。


愛する人は卒業してしまった。


長くて遠い一年。


「なぁ…」
隣にいた同級生が口を開いた。
「切原って好きな人いんの?」


フェンスを掴んでいた手の力が強まる。

「いるよ。」




遠くて


遠くて


遠い人が。
「幸村、アイス買ってきたぞ。」
「いらない。」

「いらない?お前が買ってこいと……」

「気分じゃなくなったんだ。いらないよ」

「しかし…早く食べないと溶けて…」

「うるさいな。その辺に置いて早く帰れ。」

「…………。」





















「蓮二、アイスとって」

「………さっきいらないと言っていたじゃないか」

「食べる気分になったんだ」

「弦一郎がいなくなったから…か?」

「…………いいからアイスとってよ。」

「だいぶ溶けてしまっているぞ?」

「いいんだ…真田が買ってきたアイスが食べたいから…」




柳蓮二はだいぶ感触の柔らかいアイスのカップを幸村精市に手渡すと苦笑して言った。



お前も…とんだ天の邪鬼だな。
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