ちょっとした短い小説の掃き溜め。
CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。
(※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず)
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三橋をさらうにはまず三橋の言う海外がどこなのかを知らなければならない。三橋の居場所がわからなければ何もできない。無力なものだ。
「花井、三橋が転勤したって話し聞いてる?お前もこの間の同窓会行ったんだろ?」
「転勤?知らなねーなぁ。田島に聞けば?」
花井が肩をすくめてハンカチを寄越す。お茶を拭けということらしい。阿部はありがたくそのハンカチを頂くことにした。あいにくハンカチだのタオルだのをつねに携帯している性分ではない。
「田島?なんでだよ。」
「お前本当に何にも知らないのな。田島は今三橋と同じ会社だよ。」
「はあぁ?」
「俺にキレられても…」
花井の話によると三橋と田島は進学した大学が同じばかりか、会社まで同じらしい。しかもその会社と言うのは三橋のじーさんが経営している会社で……つまり三橋は次期社長候補である…そればかりか内気で小心者の三橋を見るに見兼ねた三橋のじーさんが、ちょうど三橋の家に遊びにきていた田島を痛く気に入り、三橋の付き人としてヘッドハンティングしたとかしなかったとか…。
(ありえねぇ…)
そんな事実知りたくなかった。阿部が三橋に会えない地獄の苦しみを味わっている間、田島はずっと三橋のそばにいたのだった。
いろいろあったに違いない。10年という時を思って阿部は心の底から泣きたくなった。
(でも三橋の付き人っつーからには田島も海外にいんのかな)
「な、花井。田島の連絡先教えてくれねーか?聞きたいこともあるし会いたいんだけど。」
「別にいいけど、会うのはしばらく無理だぞ。」
「なんで?田島も海外にいんの?」
「海外?やけにそこにこだわってんだな。田島は長期主張でしばらく大阪だってこの間わめいてたぞ。」
「……大阪?」
(大阪…か)
なるほど。ひょっとすると三橋の海外転勤なんて話は嘘かもしんねーな。ニューヨークだろうがロンドンだろうがニューカレドニアだろうが厚かましく押しかけてやろうと思ったもんだが…。そもそも三橋の英語力で海外転勤なんて無謀すぎる。飛ばしたところで役に立たないのは目に見えているし、次期社長候補が海外に永住なんてまずありえねぇ。
三橋なりの嘘。
そう考えたほうが自然だ。きっと嘘の真意は…俺に会いたくねぇんだ。俺を忘れたいと…そんなところか?
阿部は花井に田島の連絡先を聞き出して部署を飛び出した。表向きは営業に出てくると宣言したが一件も外回りをするつもりはない。まぁ今月の契約数は持ち前の口の旨さが功を奏して、すでに水谷の倍以上獲得しているし、大丈夫だろうと阿部は高を括る。
社を出たところで、携帯を取り出し例の番号にプッシュした。
三回のコールで懐かしい声が耳に響く。
「はーいっ!もしもし!」
「あ、田島か」
「……………なんだ誰かと思ったら阿部かよ」
声のトーンがいっきに低くなる。別段阿部は気にしない。昔から田島はこうだった。ひょっとすると嫌われているのかもしれない。どうでもいいことだが。
「なんだとはなんだよ。」
「で、要件は?」
「三橋の居場所、教えてくんねぇ?」
「……嫌だ」
田島の即答に少し阿部は戸惑いをおぼえた。
「なんでだ?減るもんじゃねーだろ」
「三橋と会って阿部はどうするつもりなんだよ。言っておくけど10年も三橋をほったらかしにしておいて、今更三橋が好きだとか言うんなら俺は阿部を許さない。」
「……………田島」
「阿部が誰と結婚しようと構いやしないけど、三橋はそれで泣いたんだ。俺はその場にいたからわかる。三橋の心をこれ以上縛るなら俺は阿部を許さない。」
「田島…!それは誤解だ」
「三橋がさ…」
小さくなる田島の声を聞き取ろうと阿部は携帯を強く耳に押し当てた。
「三橋が…遠くに行きたいって…言い出したんだ…。道端でふらりとお前に出会う可能性のある場所に、三橋はもういたくないんだよ。三橋には大事な仕事があるから海外なんて無理だ…だから俺が説得して……いいやこの話は…。とにかくもう三橋と関わらないでくれな。三橋は今が大事な次期なんだ。俺は三橋の支えになりたいんだ。」
「田島…それが…お前の仕事だから…か?」
「違うよ。」
ハッキリとした声で田島が言う。
「俺、三橋が好きなんだ。ゲンミツに、な。だからはっきり言うけど俺は阿部が嫌いだ。」
「…………。」
プツッと電話が切れた。
通話料と通話時間を記した携帯の画面が明るく光っている。
三橋、田島がさ…お前のこと好きなんだってさ。
お前はどーよ?
田島は俺なんかよりずっ長い間お前のそばにいたんだな。俺はそんなことちっとも知らなかったよ。
その長い時のなかで二人の間にはいろいろあったんじゃねーか?田島の気持ちがハッキリしてんだもん、きっとあったよな。
それでも俺が会いに行った時、お前は俺を選んでくれるか?
漠然とだけど不安なんだよ、三橋。
お前が俺を拒んだあの日、俺はお前を傷つけてでも連れて帰って、部屋の中に縛り付けておけば良かったと今本気で思った。
これが嫉妬ってやつか?
三橋、お前が逃げるのなら俺は地の果てまで追いかけてお前に会いにいくよ。
覚悟して待ってな。
続
「花井、三橋が転勤したって話し聞いてる?お前もこの間の同窓会行ったんだろ?」
「転勤?知らなねーなぁ。田島に聞けば?」
花井が肩をすくめてハンカチを寄越す。お茶を拭けということらしい。阿部はありがたくそのハンカチを頂くことにした。あいにくハンカチだのタオルだのをつねに携帯している性分ではない。
「田島?なんでだよ。」
「お前本当に何にも知らないのな。田島は今三橋と同じ会社だよ。」
「はあぁ?」
「俺にキレられても…」
花井の話によると三橋と田島は進学した大学が同じばかりか、会社まで同じらしい。しかもその会社と言うのは三橋のじーさんが経営している会社で……つまり三橋は次期社長候補である…そればかりか内気で小心者の三橋を見るに見兼ねた三橋のじーさんが、ちょうど三橋の家に遊びにきていた田島を痛く気に入り、三橋の付き人としてヘッドハンティングしたとかしなかったとか…。
(ありえねぇ…)
そんな事実知りたくなかった。阿部が三橋に会えない地獄の苦しみを味わっている間、田島はずっと三橋のそばにいたのだった。
いろいろあったに違いない。10年という時を思って阿部は心の底から泣きたくなった。
(でも三橋の付き人っつーからには田島も海外にいんのかな)
「な、花井。田島の連絡先教えてくれねーか?聞きたいこともあるし会いたいんだけど。」
「別にいいけど、会うのはしばらく無理だぞ。」
「なんで?田島も海外にいんの?」
「海外?やけにそこにこだわってんだな。田島は長期主張でしばらく大阪だってこの間わめいてたぞ。」
「……大阪?」
(大阪…か)
なるほど。ひょっとすると三橋の海外転勤なんて話は嘘かもしんねーな。ニューヨークだろうがロンドンだろうがニューカレドニアだろうが厚かましく押しかけてやろうと思ったもんだが…。そもそも三橋の英語力で海外転勤なんて無謀すぎる。飛ばしたところで役に立たないのは目に見えているし、次期社長候補が海外に永住なんてまずありえねぇ。
三橋なりの嘘。
そう考えたほうが自然だ。きっと嘘の真意は…俺に会いたくねぇんだ。俺を忘れたいと…そんなところか?
阿部は花井に田島の連絡先を聞き出して部署を飛び出した。表向きは営業に出てくると宣言したが一件も外回りをするつもりはない。まぁ今月の契約数は持ち前の口の旨さが功を奏して、すでに水谷の倍以上獲得しているし、大丈夫だろうと阿部は高を括る。
社を出たところで、携帯を取り出し例の番号にプッシュした。
三回のコールで懐かしい声が耳に響く。
「はーいっ!もしもし!」
「あ、田島か」
「……………なんだ誰かと思ったら阿部かよ」
声のトーンがいっきに低くなる。別段阿部は気にしない。昔から田島はこうだった。ひょっとすると嫌われているのかもしれない。どうでもいいことだが。
「なんだとはなんだよ。」
「で、要件は?」
「三橋の居場所、教えてくんねぇ?」
「……嫌だ」
田島の即答に少し阿部は戸惑いをおぼえた。
「なんでだ?減るもんじゃねーだろ」
「三橋と会って阿部はどうするつもりなんだよ。言っておくけど10年も三橋をほったらかしにしておいて、今更三橋が好きだとか言うんなら俺は阿部を許さない。」
「……………田島」
「阿部が誰と結婚しようと構いやしないけど、三橋はそれで泣いたんだ。俺はその場にいたからわかる。三橋の心をこれ以上縛るなら俺は阿部を許さない。」
「田島…!それは誤解だ」
「三橋がさ…」
小さくなる田島の声を聞き取ろうと阿部は携帯を強く耳に押し当てた。
「三橋が…遠くに行きたいって…言い出したんだ…。道端でふらりとお前に出会う可能性のある場所に、三橋はもういたくないんだよ。三橋には大事な仕事があるから海外なんて無理だ…だから俺が説得して……いいやこの話は…。とにかくもう三橋と関わらないでくれな。三橋は今が大事な次期なんだ。俺は三橋の支えになりたいんだ。」
「田島…それが…お前の仕事だから…か?」
「違うよ。」
ハッキリとした声で田島が言う。
「俺、三橋が好きなんだ。ゲンミツに、な。だからはっきり言うけど俺は阿部が嫌いだ。」
「…………。」
プツッと電話が切れた。
通話料と通話時間を記した携帯の画面が明るく光っている。
三橋、田島がさ…お前のこと好きなんだってさ。
お前はどーよ?
田島は俺なんかよりずっ長い間お前のそばにいたんだな。俺はそんなことちっとも知らなかったよ。
その長い時のなかで二人の間にはいろいろあったんじゃねーか?田島の気持ちがハッキリしてんだもん、きっとあったよな。
それでも俺が会いに行った時、お前は俺を選んでくれるか?
漠然とだけど不安なんだよ、三橋。
お前が俺を拒んだあの日、俺はお前を傷つけてでも連れて帰って、部屋の中に縛り付けておけば良かったと今本気で思った。
これが嫉妬ってやつか?
三橋、お前が逃げるのなら俺は地の果てまで追いかけてお前に会いにいくよ。
覚悟して待ってな。
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