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ちょっとした短い小説の掃き溜め。 CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。 (※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず) コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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水谷文貴は、その部屋に通されると緊張のあまり正座をした。堅く握り締めた拳を膝に置く。部屋の主人である栄口勇人は、飲み物を取って来るとだけ水谷に告げ、部屋を出て行ったばかりだ。


ごくり


と生唾を飲み込む。栄口の家に遊びに来たのは何もこれがはじめてではなかった。練習のない日に、西浦の面々と遊びに来ることは多々ある。ごく普通の民家にある栄口の自室は、三橋の部屋のよう西浦ナイン全員が入れるほど広いはずがないから、その時々で暇な者同志、適度な人数で遊びに来るのだが…。


今日は水谷一人。

更に栄口とは最近念願の想いが実り、恋人となったばかりで体が強張らないほうがおかしかった。

水谷はすでに見慣れた小綺麗なこの部屋の一ヵ所を凝視する。それは白い壁に張られたどこか遠い国の湖畔と森の写真がメインのカレンダーだった。このカレンダーに意識が飛ぶには理由がある。

それは何週間か前のこと。
暇を持て余した西浦メンツの何人かでやはりこの部屋に遊びに来た時のこと。

その時も田島はエロ本探しにやっきになっていた。田島は他人の部屋を訪れた時、真っ先にその部屋に隠されたエロ本を探す。田島の嗅覚は凄まじく敏感で、西浦メンツで田島にエロ本を見つけられたことがないのは、栄口と三橋だけだった。もっとも三橋は本当に持っていないらしい。栄口もはじめは持っていないと言っていたのだが田島は信じなかった。栄口の家に訪れるたびに田島が栄口の部屋を引っ掻き回すので、困り果てた栄口は、眉を寄せてこのカレンダーを指差して言ったのだった。

「俺さ、女で抜かないんだよ。こういう風景画見て抜くんだ。変人扱いされたくないから今まで黙ってたんだけど…」


その一口に納得したのかどうかは知らないが、そんな栄口の告白を聞いてから田島は部屋荒らしを止めた。


だがこの発言で一番衝撃を受けたのは、俺だと水谷は思う。恋人…が女体に興味がない…どころか綺麗な風景でなければ勃たない…という衝撃の真実。
だが水谷の中で想いは変わらなかった。栄口が好きなのだ。これしきのこと……気にしたりはしない…受け止めてみせる……。

じぃ…っと水谷はこの世界のどこかに存在しているのであろう風景写真を凝視する。
(俺の魅力が、この風景以下だと思われてたら…どうしよう…)


「水谷、何してんの?」

麦茶の入ったグラスを二つ手にして栄口が帰ってくる。

「さ、栄口…俺とこのカレンダー……どっちがそそる?」
恐る恐る尋ねると、栄口はキョトンとし、やがてその言葉の意味を理解したのか大声で笑い出す。

「ぶっ…あっはははは!あはっ…ははは…ひぃ~…涙出てきた…」

「さ、栄口?」

「この間言ったこと真に受けてたの?ぶぶっ…嘘だよ」

「うっ嘘ぉ!?」

驚きのあまりつい情けない声を水谷はあげてしまう。

「ひぃ…ぶっふはっ…腹痛い……田島があんまりしつこいから…さ…冗談のつもりで…まさか水谷が…信じて」

「さかえぐち~…あんまり笑うなよぉ…」

栄口が嘘などつくはずがないと思っていた。恥ずかしさから顔から火が出そうだ。

「ごっごめん…」


笑いすぎて涙目の栄口は、涙を拭って言う。

「もちろん水谷のほうがそそるよ」

(やばい……顔から本当に火が出たかも)

熱を帯びた顔を押さえながら必死で話題を変えようと水谷は思った。

「じゃ……栄口のエロ本はどこにあるの?」


「う~ん……」


栄口勇人は水谷文貴の手首をそっと掴み、軽く触れるようなキスをして言った。







それはね、内緒。


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三橋のことを考え出すと夜も眠れなくなる。
眠気を冷ますにはコーヒーが良いと聞くけれども、俺には頭の中に三橋を思い浮かべるだけで、カフェイン以上の効果が充分得られると思う。

ごろりと何度打ったかわからない寝返りを打つ。

カチカチと無機質な秒針の音が響いていた。

布団に入ってから寝付けずにいる。今日もまたべそをかいていたあいつを思い出してしまって。どれだけの時が無駄に流れてしまったのだろうか。明日の朝だって早いのに…寝なければ…明日が辛いのに。目を閉じるとオドオドした三橋が現われて、眠らせてくれないのだった。

「三橋…」

天井の染を虚ろに眺めながら無意識にボソリと呟いてしまって、ああ本当に俺って末期なんだなと悟る。

と同時にイライラした。

なんでこうも俺ばかりが、想いを患わなければならないのか。

枕元の携帯に手を伸ばして、着信履歴からあいつの番号を探す………なかった。

思ってもいなかった事実発覚に俺のイライラはさらにエスカレートした。

発信履歴に残る無数のあいつの名前。

なんだ…そっか…俺の一方通行だったのかよ……いや三橋はよくわかんねぇ…オドオドして他人に電話なんてそもそもかけたことねぇのかも……ってそんなふうに自分を慰めたって空しいだけなんだけどな。

そして俺はまた一つ携帯に発信履歴を残す。三橋廉の名前を。

チラッと目覚時計に目をやると二時過ぎていた。

もう寝てるはずだ。

だが出ろよ、三橋。

俺ばかりがお前のせいで眠れないなんて許さない。

コールは二回だけ…思っていたよりも意外と早くあいつの声が聞こえてきたので俺は少し驚いた。
「うぉっ…!あっあべくん…!どっどうしたのっ?」
「………起きてたのか?」
「ねっ寝てた…よ…」
「そのわりには早く出たな。」

「あっ…あの…その…」

オドオドともたついた声。イライラする。でもその声は麻薬のように俺を酔わせる。一人の夜に…たまらなく聞きたくなる。

「眠れなっ…くて…阿部君に…電話しようっか…迷ってたんだ…阿部君もう寝てるかなって…思って…迷惑かなって…俺びっくりした…あっ阿部君っありっ…ひっく…がと…俺…嬉しい…」

あ~あ…また泣いてんのかよ…。
深夜にいつまでも携帯と格闘する三橋が目に浮かぶ。

声が聞きたいと思ってもなかなか押せない通話ボタン。

やばい…これはかなり嬉しいかも。今夜はとても眠れそうにないな…。

「三橋」

「う…うぇ?」

嗚咽混じりに三橋が相槌を打つ。

「お前、今日寝るなよ。」

「ふぇ?な、なんで?」

「お前のせいで俺が眠れないからだよ。だから寝んなよ。」

「う、うん!わ、わかった…俺寝ない、よ阿部君!」


コイツ…俺の言葉の真意なんてわかってないだろうな。

それでもいい。今は。

決して逆らうことのないあいつの柔順な姿勢が俺を安心させるから…こいつは俺のものなのだ、と確信が持てるから…。



窓の外に目をむけると高い高い空に中途半端に欠けた月が妖しく輝いていた。



眠れない夜は



お前のせいだよ、三橋。


滝のような雨が降っていた。
幸村精市はため息をついた。
天気予報では快晴だと言っていた。

突然の雨。

「幸村君」
「ああ、柳生」
「傘を忘れたのですか?」
「ふふっ…まぁそんなとこ」「ではこれをお使いください」

柳生は1本の折り畳み傘を幸村の手に握らせた。

「えっでも…」
「もう一つ傘を持ってきていますから気にしないでください。」

柳生は背をむけて去ろうとした。



「ありがとう、仁王」



「なんのことでしょうか?」



素直じゃないな、と幸村は傘を開きながら思った。
あの日あの時あの場所であんなことを言わなければ真田を失うことなんてなかったと思う。


俺はずっと悔いて来た。


この腕で君を抱けないことがこんなに辛いなんて思っても見なかった。




今この時…君はどこにいて誰を想っているんだい?



俺はあの日からあの時からあの場所から

一歩も動けずにここいる。




あの日あの時あの場所で。
俺はあの笑顔に弱い。

あのほほ笑みを見るとどうしても嫌だとか止めた方が良いだとか心に思っていてもとても言えない。口に出せない。言葉にならない。


NOと正直に言ったほうが精市のためになることも…。


「ねぇ蓮二。クッキー焼いたんだけど、食べてくれるよね?」

俺は目の前に差し出されたとてもクッキーと識別することのできぬ真っ暗な炭の物体を見つめた…。

「もしかして…クッキー嫌いだった?」
「そ、そんなことは……」

駄目だ…。
こんな炭…胃癌の元だとはとても言えない。

「い、いただこう…」

震える手でその物体に手を伸す。
「………………」

精市はずっと俺を見ていた。嫌でも旨い顔をしなければ…

これは炭じゃない…
これは…そうだ…イカ墨クッキーだと思うことに……


「せ、精市…」
「ん?」
「げ、弦一郎には食わせたのか?」
「まだだけど…」
「わけてやるといい。きっと手放しで喜ぶぞ。」
「そうだね!ちょっと行ってくる!」


精市は笑顔で走り去って行った。

すまん弦一郎……。
お前の尊い犠牲を俺は忘れるまで忘れないぞ…。


俺はこのすきにあのおぞましい炭の物体をゴミ箱に捨てることに成功したのだった。


俺のために時を割いて作ってくれた…その気持ちだけ受け取ろう。

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