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ちょっとした短い小説の掃き溜め。 CPごとにカテゴリをわけていないので、お目当てのCPがある方はブログ内検索を使ってください。 (※は性描写やグロい表現があるものです。読んでもご自身で責任がとれるという年齢に達している方のみ閲覧下さい。苦情等は一切受け付けませんのであしからず) コメントはご自由にどうぞ。いただけるとやる気が出ます。
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時間を戻せたらどんなにいいだろう。
未来を知った上で過去に遡り…未来を改竄する。
予め起きることがわかっていれば同じ失敗を繰り返さなくてすむし、後悔してやまない事も何度でもやり直せる。

一方的に流れる時を好きに行き来することができたら……それは三橋の強い憧れだった。
失敗ばかりの自分。後悔ばかりの自分。やり直しがきけば……もう少し自分が好きになれるかもしれない。


「な~!昨日のタイムスリップする映画見た?過去と未来を行ったり来たりするやつ!」
9組の昼休み明るい田島の声があがる。
「う、うん!」
「お~見た見た」
「なかなか面白かったよな」三橋の席を中心にして泉、浜田も会話に加わる。9組の昼休みはこうしてはじまる。話題の提供者は大体が田島だ。「俺も過去と未来を行ったり来たりしてみてえなぁ」
コンビニの袋からパンを取り出してかぶりついた浜田が言う。
「お~。浜田にそんな力があれば留年なんかしないですんだのにな。」
といつもどおりの辛口で弁当を広げる泉。
「にゃははは!そ~だな!」「お前らな…。でも泉だって過去と未来行ったり来たりしてみたいって思うだろ?」
「俺にそんな力あったら好きなだけ朝寝坊するな。起きた時、時間戻せば遅刻しないだろ。三橋はどう?」
紙パックのイチゴミルクのストローを甘噛しながら泉は三橋を見る。三橋はいつもながらの豪華そうな弁当を広げコクコクうなずいた。

「おっ俺も…時間戻して…みたい…」

(過去に戻ってやり直せたら……叶君や畠君と…はじめから…仲良く…できるかな…)口に出しては言えないけれど、昨日テレビ画面をぼんやり眺めながら三橋はそればかりを考えていた。

「バーカ。時間を好き勝手に戻されたら野球の試合がめちゃくちゃになっちまうっつの。なぁ田島?」

とこれはいつの間にか7組からやってきた阿部。三橋と田島の間に強引に割り込んで弁当を食べている。いつものことなのでもはや誰も突っ込まない。

「そーだよな!阿部のリード全部読まれちゃうしな!そしたら阿部いらなくねぇ~?」
「田島の打ったヒットも全部キャッチされちまうぜ。田島を四番にすえる意味、ないよな」
(くっ黒っ…!!どす黒っ…!!)

泉と浜田の背中にオカンが走る。意味がよくわからなかったのか三橋は箸を咥えたままキョトンとしていた。



「ま、でもさ三橋!」

ニィッと田島は三橋を見つめて笑った。


「俺、過去を変えたいなんて思わないよ!だってこうやって三橋に会えたんだもん。変に過去いじくって三橋に会えなくなったら絶対やだし!!俺は今のままがいい!!」
「たっ田島くん!!!」

よっぽど嬉しかったのか三橋は真っ赤になって目を潤ませた。

「おっ俺もっ…!田島君と会えて良かった…!田島君っが好き…だから俺も今のままっがいい!」
「そーか!俺も三橋が好きだぞっ!な~なんかおかず交換しようぜ!」
「う、うん!いいよっ!」
「俺卵焼きがいい!卵焼き!三橋はなにが欲しい?」
「じゃじゃあウィンナー……」


展開されるはもはや二人の世界…。その間に取り残された阿部は石化した。

「あ~あ…阿部のやつ固まっちまった…。」
「三橋が好きだまで言っちまったからな…」
「田島には勝てねぇっていつになったら気がつくんだろうな……」

もぐもぐと口を動かしながら観客と化した泉と浜田は囁きあう。











過去を変える必要も未来を知る必要もない。
大事なのは現在なのだ。
大切なのは今…

過去の積み重ねの上に尊い未来があるのだと三橋は知った。そして未来は…その行方など知らなくとも努力とちょっとした勇気で大きい7変化するのだ。


田島君、ありがとう。


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なかなか練習にやってこない三橋を探して阿部は第一音楽室までやってきた。
田島が三橋は今日第一音楽室の掃除当番だと言っていたから。

ドアを開けようとした手を阿部は思わず止めた。

中から滑らかなピアノの旋律が聞こえてきたからだ。

(まさか…な)

まさかあいつじゃねぇよな。
阿部の脳内におろおろとキョドる三橋の姿が鮮明に蘇る。
三橋とピアノ。

不釣り合いにもほどがある。三橋がオドオドとたどたどしくピアノを奏でる様を想像して噴き出しそうになりながら、阿部はドアを開けた。

室内を目にして思わず息を飲む。

軽やかで綺麗な明るい音色。その音を紡ぎ出していたのは、三橋だった。窓から差し込む太陽の光を背に受け、堂々とグランドピアノに向う三橋は想像を絶するほどに頼もしく幻想的な美しさを宿していた。


視覚も聴覚もしばらく奪われて、立ち尽くしていた。

「あっ阿部君!?」

音が止む。三橋が阿部に気がついたのだった。
ハッと阿部は我に返る。

「ごっごめっ…つい夢中になっちゃ…て…急いで行くから」
「ちょっと待て」

鍵盤に蓋をかぶせようとする三橋を阿部は制止した。

「今のなんて曲だったの?」「えっ…と……こっこいぬのワルツ…ショパ…ンの」
「お前ピアノ弾けるんだ。びっくりしたよ、めちゃくちゃうまいじゃん。今でも習ってんの?」
「も、もう止めた…。群馬にいた時…親戚のうちに住んでた…んだけど、従姉妹が習ってて…先生が毎週来てたからついでにって俺も一緒にやらされ…たんだ。」
「止めちまったのか。もったいねーな」
「もったいなく…なんか…ない…よ。俺より上手い人なんていくらっでもいる…」
「いねーって。」
「いっいるよ…おっ俺なんか…いやいややらされて…た…だけ…で本当たいしたこと…ない…」

阿部はそっと三橋の手を握る。

「あっ阿部君!?」

指先を動かしていたからだろうか…普段より温かい手だ。

「少なくとも俺の中じゃNo.1のピアニストだな」
「う、うへ……」
「もう一度弾いてよ。俺ゆっくり聞きてみたいんだけど」「う、うん…!」



近くのイスに腰を下ろして三橋の演奏に耳を傾けた。
真っ赤になって一生懸命に指を動かす三橋の姿が愛らしい。ころころと世話しなく駆け回る曲。注意深く見張っていないとどこかに飛んで行ってしまいそうで……三橋のような曲だ。


三橋って…意外と器用なんだよなぁ…。

頬杖をつきながら阿部は思った。

綺麗に球種を投げわける指先。9分割のコントロール。そして鍵盤の上を滑らかに踊る指先。

三橋の指は魔法の指だな。

そして俺は魔法に魅せられた男。


ふと窓の外に目をやると野球部の練習風景が見えた。

たまにはいいと思う。

練習を休んで三橋と二人で穏やかな時を過ごすのも。


視線を戻して、綺麗な三橋の姿を目に焼き付けた。


ああ、やべぇ…


三橋の魔法に魅せられて胸の動悸が鳴り止まない。




いつまでそうしていたやろか。気がつけば叶は、大粒の涙をポロポロ流して泣いていた。ホンマにびっくりしたで。

「叶!?何も泣くことあらへんやろ!?」
「は?別に泣いてねーし…アレ??」

叶は自分が泣いてる自覚がなかったらしく、頬に触れた手に吸い付いた液体を見てびっくりしとった。

「なんで俺泣いてっ…!」

止める方法がわからんのか、逆に叶のおっきな眼から涙が洪水のように溢れ出しおった。

「なにやっとんねん!」

俺は叶の腕をつかんで自分の背で隠すようにして叶を人気のない場所に引っ張っていった。ほらこんな人間でごったがえしてる場所…誰に見られるかわかったもんやないやろ

「叶、そんな泣くなや…俺どうしてええかわからんやろ」
たどり着いた場所は神社の境内やった。叶をそっと抱き締めて背中を擦ってやる。

「織田ぁ」
「なんや情けない声出して…」
「俺、三橋が好きなんだ」

おい。いきなりそりゃないで。心の準備はできとったけど、今いい感じに俺叶のこと抱き締めとったやんか。傷つくやろ。

「ずっとずっと三橋と一緒だったんだ。俺がずっとあいつ守ってきたのに…あいつ突然いなくなっちまって…俺どうしていいのかよく分かんなかった。それは認める。」

「はぁ…」

「織田を三橋の代わりにしようなんて思ったこと一度だってねーつもりだ…。でもいつの間にか織田と仲良くなって一緒にいるようになって…ついつい三橋と一緒にいたこと思い出しちまうんだ。今日の夏祭りだって物心ついた頃から三橋と一緒に行ってたから。三橋の思い出に浸っちまって…つい三橋がいるような気分になって……それが織田の気に触ったなら謝るよ。ごめん。」

「いや……」

なんて返せばいいんやろか。うまく言葉にできへん…けどな確かにショックやけど…けど俺思ってたよりショックやないかもしれん。

だってここに三橋はおらんやんか。

叶の中にいる三橋は過去の人間やんか。

三橋がまだ三星の生徒なら俺が入っていく隙間なんかないやろな。こいつら二人が紡いできた時間は途方もなく長いんや。

でも三橋はここにはおらん。三橋は叶の隣よりも野球を…選んだんや。

三橋は叶の隣という特等席を捨てたんや!

時間なんてこれから腐るほど流れるやろ。これから俺が三橋よりも長い時間叶の隣にいればいいんやな。そうすれば叶も三橋を忘れて俺を見るやろ。叶は過去に縛られてるんや。それは俺と時間が解決できるんやないか?


「叶、わかったで」

俺はギュッと叶を抱く力を強めた。

「お前のそばにいたる。泣かなくていいんや。俺がずっとそばにいて三橋のこと忘れさせたるからな」

「織田……」

仄暗い林の奥に三橋の残像を見たような気がした。


なぁ三橋。
早う叶の胸から消えてくれへんか。俺、叶が好きやねん。本当に好きなんや。
お前には絶対負けへんぞ。 悔しかったら俺の腕の中から叶をさらってみろや。さらって抱き締めてみい。
できへんやろ。できへんやろな。どんな理由があろうとお前は叶を一度捨てたんや。俺は何があっても叶を離さへんからな。


だから…


だからな……




彼の残像が…早く消えて…彼の心が早く自由になりますようにって俺は柄にもなく神様に祈ったんや。





「みは……じゃなかった織田ぁ!」


また三橋と言いかけて俺は焦る。また…だ。さっきもやっちまった…。何度も何度も…くそっ俺って進歩しねぇやつだな…。


ほら…織田が怪訝な顔してるじゃねぇか…!絶対に怪しいって思われてるって。


それにしてもなんでだろうな。自分でもよくわからねぇんだ。なんで俺、織田のこと三橋って呼んじまうんだろう。三橋と織田なんて、比べるまでもないほどに全然似てないじゃないか。むしろ正反対のタイプだろ…。


三橋…三橋って言えばさ…元気でやってんのかな。たまにメール送ってやったりすんだけど、あいつめちゃくちゃ返信遅いんだよな…。なんて返せばいいかわかんなくて…頭ん中ぐるぐるしてんのかな。なんでも俺は嬉しいのに馬鹿なやつだな…。

夏祭り…行ったかな。

今年は織田と一緒に来たけど。小さい頃から毎年ずっと三橋と一緒に来てた…本当だったら今年も…三橋と一緒に来るつもり…だった…んだけどさ。あいつは俺のそばからいなくなっちまった。ははっ…当然だよな…俺…三橋を守ってやれなかったんだから…。だからきっと俺が…悪いんだ。


なんか辛気臭くなっちまったな。せっかくの夏祭りなんだから楽しまねーと。付き合わせた織田に悪いよな。そういえば三橋は毎年金魚掬いを楽しみにしてたんだよなぁ。あいつ…すぐポイが破けちゃうから俺が三橋の分もとってやらないといけなかったんだよな。はは…懐かし…。

「みは……織田金魚掬いやろうぜ!」
「…………」
「織田ぁ!」
「なんやうるさいわ」
「お前がさっきから無視すっから!」
「叶……」

織田はじっと俺を見つめた。なんだか心の中を覗かれているようで…怖くなって俺は少しあとずさる。

織田は俺が思ってもみなかったことを言った。

「叶、俺は三橋の代わりやないからな」




なんだよ、それ。


なんだよ……それ。



俺はそんなつもりなんかじゃ…
(じゃあなんで織田を三橋って呼んじまうだ)


それに三橋の代わりなんて俺は別に必要としてねぇ
(毎日毎晩四六時中三橋のことを考えてるくせに?)


織田は俺の今一番の友達で…
(ただ中学のやつらを避けてただけだろ?織田は一人だったしちょうど良かったんだよな?いつもそばにいてくれるやつなら誰でも良かったんだ。)


織田は…!三橋の代用品なんかじゃ…!三橋の代用品なんかじゃねぇ!!
(嘘つき。織田はただの代用品だろ。)



あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


違う…と首を降りたいのに…違う…と言いたいのに…。
顔が上がらなかった。声も出なくて…。


花火の舞い散る音がしたけど…俺はそんなものに目をむける余裕もなくて。



ただ、ただ…織田の視線が痛かった。


三橋……三橋に会いてぇよ…ちくしょう。

「みは……じゃねぇや織田ぁ!」


叶は俺の名前を呼ぶ時、たまに“三橋”と間違える。
ほら、今もまた間違うた。

ずっと不思議だったんや。三橋って誰なん叶?

三橋と俺を呼び間違えた叶の顔がな、自覚があるんかないんかは知らんけど、辛そうで辛そうでずっと聞けなかったんや。

三橋って誰やねん。叶の何?ってな。


西浦と練習試合して、やっとその“三橋”を知った。正直驚いたで。だって俺と三橋全然似てないやん。共通点なんか何もないやろ。むしろ正反対ちゃうんか?

三橋を知って謎は更に深まってしまったんや。



叶、なんでや?
なんで俺のこと、三橋って呼びそうになるん?

なんでそんな悲しそうな辛そうな顔しとるん?

そん時のお前の顔、人類が叶一人残して死滅したみたいやで。………この比喩はちょっと大袈裟やったかな。



今日は花火大会の日やった。出店なんかもいっぱい出よって、俺は叶と二人で遊びにきとった。関西から野球留学の俺は、入学する際知ってるやつは誰一人おらんかったけど、夏になった頃には叶と一番仲良くなっとったな。
気が合うとか相性の前に、叶がよく俺と付き合いたがったんが原因やな。三橋を知った今になってわかったんやけど…あんまり中学時代からのチームメイトと一緒にいたくなかったんやな、叶は。あいつらとおると大好きな“三橋”を思い出してつらいんやろな。

ほんなら“三橋”のこと一切知らん俺は、ちょうど良かったわけやな。さらに西からの転入生でろくに友達もおらん。叶にとって、一番近付きやすかったんやろなぁ。
ひょっとすると俺もはじめは寂しいな光線…出してたのかもしれんわ。

俺と叶が周りからも二人で1セットやと思われるようになった頃から、叶は俺を三橋と呼び間違えるようになった。
「みは………織田、金魚救いやろうぜ!」


ほらなぁ。
叶…あんまりそれ俺愉快やないで。

だってそれ…叶が心の奥底で俺を三橋の代わりやと思ってる証拠やろ?


「織田ぁ!」
「なんやうるさいわ」
「お前がさっきから呼んでんのに無視すっからっ!」
「叶……」

じっと見つめると、少しだけ叶は怯えるようにあとずさった。

叶…お前が辛そうやからな、言わんようにしようと思ってたんや。
でも俺もう我慢できへん。
だってな俺は三橋の代わりちゃうで。叶の心の寂しさ埋めるために一緒にいるんちゃうで?

俺、叶が好きやねん。

俺のこと見てや。
俺だけ…見てや。

「叶、俺は三橋の代わりやないからな。」



そう言うと、叶は少しだけ驚いたように目を開いた。

そしてきつく唇を噛み締めて、拳を握ってただ辛そうに痛そうに俯いた。

叶は何も言わんかった。一口もしゃべらんかった。
胸の奥底で自覚があったんやろうか。




大きな音がして花火があがる。空が次々と明るくなって暗くなった……けど俺は俯いて一言も言葉を発しない叶から目を離すことができへんかった。

綺麗なはずの夜空の華に目をやることができへんかった。



ずっとずっと長い間、叶を見とった……。
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